日本では 仏教僧は妻帯を禁じられていた

日本だけではない 世界中の僧が妻帯を禁じられ そして世界では今日でもなお妻帯しない僧もいる

ここでいう妻帯は ただ結婚しないという意味だけではなく 女犯とされる女性との性行為はもちろんのこと あらゆる関わりを含み 禁じられていたことを意味する

しかし ここで思い出したい

若き日のブッダであるゴータマ・シッダールタ(一般的には,出身部族の名をとってシャカと呼ばれる)はヤショーダラと結婚し ラーフラという子どもがいた

つまり 妻帯し 女性と性的な交わりがあった

それが後には 悟りを得るため あらゆる煩悩を絶つための手段の一つとして 妻帯や女性との性行為を禁じるようになった

それだけではない 彼は女性が仏教教団に入ることも嫌った

シャカは 古代インドの身分制度を否定し 人間の平等性を説き 平等社会の実現を目指したはずである

にもかかわらず なぜ彼は悟りを得るなかで女性を避けたのか

我が国において 女性と仏教の関係に注目され その研究が盛んとなったのは 1980年代に入ってから

主に 歴史学 国文学 民俗学に立場から研究がすすめられ 『女性と仏教』という書物も刊行された

しかしながら 仏教学の立場から いや仏教者が仏教における女性の存在に注目した先行研究はほとんどみられない

そのため本研究では 仏教的観点から検討することで 新たな女性と仏教の関係を明らかにしたい

【発表】
平松隆円 2007 「女性をめぐる仏教-差別から救済まで-」日本仏教教育学研究 15 pp.108-116