parade


パンクからニューウェイブへとシーンが変遷していく中で、いくつものバンドが生まれては消えた。PILやクラッシュ、Jamが第一世代だとすると第二世代のアーティスト達の多くは、それらのバンドが獲得した財産の上に乗っかろうとしたのかもしれない。ストーンズのミック・ジャガーとデヴィッド・ボウイは、そうしたニューウェイブのアーティストたちに対して、正確な距離を取った発言と、それにリンクする素晴らしい作品をリリースし続けていた。

元々、パンクロックやニュー・ウェイブのスタイルが生まれたのは、従来のロックのスタイルで表現できない感覚や感情が僕らの中に生まれたからだ。その事実に自覚的なアーティストは案外少なかったんだろうな。もっと言うと時代に踊らされたのだ。それは僕も同じ事だが…。

さて、そんな時代の空気に踊らされていたロッカーやロックファンにとって、アメリカから登場したプリンスは衝撃だった。オーセンティックな感情と最先端の感覚が見事に融合された音は、少しづつエネルギーを失っていくニューウェイブにすがるロックファンをことごとくさらってしまった。前置きが長くなったが、今回紹介するのは1986年発売の作品『Parade』。

この作品は、クリストファー・トレイシーというジゴロの人生を描いた映画のサントラとして発売された。前々作『パープル・レイン』は、映画・レコード共に大ヒットしたのだが、この映画はさんざん。肝心のレコードの方も当初はあまり売れなかったらしい。しかし、僕は未だにこの作品の影響を受け続けている。

乱暴に言ってしまうと、この作品のテーマは、現代社会での生き難さだと思う。クリストファー・トレイシーというジゴロはプリンス自身がモデルだろう。モダンな弱さを抱えたトレイシーの内面が、まるで水墨画のようなシンプルなタッチで描かれている。プリンス自身はこの作品をあまり好きではないらしい。確かに、他の作品と比べるとプリンスらしいボルテージの高さはないし、若干ユーモアに欠ける気もする。しかし、僕を含め多くのファンがフェイバリットにあげるのは、この作品がそれまでのロックやパンク、ニューウェイブのスタイルでは表現したくて表現しきれなかった感情を言い当てているからだと思う。

90年代は、市場に歩み寄ったかのような少し凡庸な作品もリリースしていたプリンスだが、ここ数年の作品はプリンス本来のクラシカルでモダンな感覚が蘇ってきた。30年以上もイノベーションを続けてきた彼の創造力は、一体どうやって生まれているのか?この作品、『PARADE』から数えて3つめの作品、通称『ラブ・シンボル』発売後のインタビューに、その謎を解く鍵がある気がしてならない。

『愛と金は別のものだって、みんなわかってくれればいいのに…』