前回のジャム評を書いたことがきっかけで、ポール・ウェラーのソロ名義の何枚かのアルバムを聞きなおしてみた。これがすごくいいのだ!今回は、発売されたばかりの新作『22 DREAMS』を中心に、ジャム解散後の彼の軌跡を紹介。
ジャム解散後の彼は、スタイルカウンシルというスタイリッシュなソウル系のバンドを結成した。メンバーに黒人を加えた通称スタカンは、かってのジャムで出来なかった、白人のソウルミュージックを追求したユニットだった。ジョン・ライドンのPIL、『sandinista』以後のクラッシュと比べても、彼の変貌にファンは驚いた。しかし、かれにとってスタカンは必然だった。元々ソウルミュージックを愛するポールのスピリチュアルな内面は、ギターのコードワークが中心のジャムのスタイルでは、十分に表現しえなかったのだろう。
一見お洒落なスタカンは、バブルの影響もあって日本でもよく売れた。ジャムとの一番の違いは、女性ファンがついたこと。その後、何枚かのアルバム制作とツアーを経て、彼はソロで活動を始める。
僕はこの頃、ポール・ウェラー名義で発売された数枚のアルバムをよく聞いていた。ポールは、ぼくより二つ上で、ほぼ同年代。つまり、プライベートで抱えていた問題もダブっていたからだ。僕は、まるでバイブルのように彼の作品を毎日聞いていた。
さて、今回紹介するのは、2005年発売の『As Is Now』そして最新作『22 DREAMS』。どちらも、若いロックファンにも聞いてもらいたいと思うくらい清冽な印象の作品。
『As Is Now』は、大人になったJamと言えば分りやすいだろうか。元々、ポール・ウェラーの音楽は、アコースティックなニュアンスのエレクトリック・ギターが特徴的なのだが、このアルバムでは、そのスタイルが進化している感じ。オアシスのギタリスト、ノエル・ギャラガーがポールを師匠扱いするのも分かる気がする。
『22DREAMS』の方は、ポール・ウェラー自身によるトリビュートアルバムのような作品。少しわかりにくいかな?普通トリビュートアルバムは、ファンが敬愛するアーティストの曲を自分なりにアレンジして演奏するものだが、今回のアルバムは、ポール・ウェラー自身が、過去の自分の音楽を客観的な視点からアレンジしているような気にさせるのだ。最近のブリット・ポップやJazzの影響も随所に感じる。どういう訳か、全21曲で『22 DREAMS』。22曲目は君自身の夢を語って!というメッセージのよう…。ポール流のファンに対するメッセージなのだろう。もっと言うと、ロックアイコンとしての自らを繊細な手つきで否定しているのかもしれない。世間が認める存在の大きさでは比較にならないかもしれないが、このアルバムは『BEATLES』のアルバム、『サージェントペパーズ・ロンリーハーツ・クラブバンド』を連想させる。あたりまえのことだが、音楽は夢であり幻想である。というか、夢や幻想としてしか、他者に伝わっていかない。前述の大物パンクロッカー、ジョン・ライドンやジョー・ストラマーではなく、何故ポール・ウェラーが現在進行形のロッカーでいられるのか?その答えはこの作品の中に詰まっている。

