ピストルズ、クラッシュと並んで人気だったパンクバンドがジャムだった。そのリーダーだったのが、現在でも精力的に活動するポール・ウェラー。自らに大胆なイノベーションを義務付けていたジョンライドンやジョー・ストラマーと比べて、ポール・ウェラーには、どうしても地味な印象が付きまとう。ビートは性急だが、コード進行や歌のメロディーは普通っぽいのだ。当時の僕にとって、あまりピンとこないアーティストだった。
このアルバム『The Gift』は、ジャム名義の最後の作品として発表されたもの。今、聞いてみるとパンクロックというより、ソウルの影響を受けたファンキーなブリティッシュロックと言ったほうがいいと思う。
当時のロンドンは不況にあえぎ、失業率も高かった。このアルバムには、そんな場所に生きる若者の気持ちが詰め込まれている。R&Bの定着した現在の日本で今リリースされたとしたら、大ヒットするんじゃないだろうか?そんな気になるほど、よく出来たアルバムなのだ。彼の歌は、とりたてて語ることのない普通の人々の苦しみや悲しみを代弁している気がする。
亡くなってしまったジョー・ストラマー、ほぼ隠居に近いジョン・ライドンと比べ、地道にアルバムをリリースし続けるポール・ウェラー。このアルバムを聞いていると、音楽を愛する彼の芯の強さが伝わってくる。ベストは『カーネーション』。手元に歌詞がないので、詳しい説明はできないが、彼の誠実さが伝わってくるとてもよく出来たメッセージソングだ。
1960年生まれの僕は、パンクロックが生まれニューウェイブになる様をリアルタイムで体験した。誰もが経験する、自分は天才ではなかった!という失望感から立ち上がる時期にPILやクラッシュ、ジャムの音楽はあった。ジャムの音楽とポール・ウェラーの生き方は、今も僕を励ましてくれる。
