BECKは掛け値なしにいいアーティストだと思う。いつもイノベーションを怠らないこと以上に、複雑に歪んだ巨大なアメーバのような自らの母国、アメリカを愛していることがその理由だ。彼のような知的で鋭敏なアーティストが、現在のアメリカで楽に生きられるはずはない。ましてや素直に愛することは難しいだろう。彼の作品は一枚を除いて全部聞いているが、すべてがそんな母国に生きる同じアメリカ人への真摯なメッセージのようにも聞こえる。
今回の作品のタイトルは『MODERN GUILT』。直訳すると『現代の罪』となる。今回は、穏やかなビートと60年代のアメリカンポップスを連想させる不思議な佇まいの曲でアルバムがスタートする。彼の曲は歌詞がとんでもなく素晴らしいんだけど、曲を聴くときには読まないようにしている。そのメロディーや音のスタイル、感触が必然的に選ばれたことのほうが、なんだか大事なことのような気がするのだ。もっと言うと、曲ごとに自分なりに言葉を想像して当てはめてみるのが、BECKの音楽を楽しむコツのような気がする。
僕の処女小説『アルバトロスを探せ』のふたりの主人公のうちのひとり、つまりLA生まれのDURANのキャラは、ほとんどBECKに近い。書いているときに意識はしなかったんだけど、日本人の僕が想像する理想のアメリカ人に近いんじゃないだろうかと思っている。
彼の音楽は過去のロック、それもどちらかと言うと、マイナーなアーティストの曲のリフレインやビートをヒントにしていることが多い。それがブルースであれ、パンクであれ、HIP・HOPであれ、実にうまくBECKの音になっているのが特徴だ。本質的にはHIP・HOPのアーティストがサンプリングするのと似ているんだろうな。どんな音楽も同じ平面に持ってきて加工している感があるのだ。
比較的資質の似ているだろうと思われるアーティスト、プリンスやレディオヘッドと比べると、その音楽の外見に一見派手な風情はない。しかし、前述のふたりに勝るとも劣らないクォリティとセンスのある音楽。やっぱり君は最高だよDURAN!…いや、BECK!
