治;
そうですね。じゃあ正直お話しましょう。実はとても共感しました。オープニングの悲しげな鐘の音から始まる『マザー』のインパクトは特に素晴らしい。私は、大したポリシーのないただの無冠の小説家ですが、サロンの偽善とだけは断固と戦ってきたつもりです。つまり、嘘の悲しみや気分だけの苦悩と決別してきたのです。『マザー』は心の中の母をほんとうに無くした歌ですね。実際の母についての貴方の不幸な現実を私は知りません。しかし、そんなことは取るに足らないことです。実際に母がいるのかどうかとは関係なく、この歌は全ての若者の心に杭のように刺さるのではないでしょうか?それは敏感な若者の多くが大なり小なり心の底で抱えている喪失感を代表するものだからです。ある意味、不幸な感受性といえます。現実の母はやさしいのに、感受性がその愛の不全を暴いてしまう。ところで、突然性急な質問をさせていただくのですが、貴方にとって奥さんは母の代理なのでしょうか?

Lennon;
どうもありがとう。『治』でいいですか?治の見方は日本人独特のものかもしれません。イギリスでこのレコードをはじめて発売したとき、実は気が狂った孤児の歌だ!と揶揄されたのです。実際、私は幼い頃に母を亡くしていますが、治の言うように、実際の母が亡くなった事を嘆いた歌ではありません。私は…その前に母を亡くしていたのです。それと、ヨウコは私にとって母の代理ではありません。

治;
やっぱりそうか!ジョンはそう言うと思っていました。もし、ジョンが奥さんに母を求めているのなら、奥さんと出合った後にこの歌を歌う必要はなかったでしょう。この歌はヨウコさんに出合ったかなり後に作られているし歌われていますから。素晴らしい歌ですが、聞く人によっては大変苦痛にしか感じられないんでしょうね。

Lennon;
それは承知のうえです。僕はビートルズのジョンレノンを捨てたかった…。

治;
なるほど…。ビートルズもジョンにとってはひとりの母だったわけですか???

Lennon;