四国一周の旅から帰り、僕は久々に明るい気分になっていた。

               俺には捨てるものが何もない…

そう思えてきたのだ。『時には孤独や空腹に耐えながら自分を支えてきた夢を僕はもう持っていない。要はそのことをどう考えるかなのだ。元々特に夢を持たない人たちは多いような気がする。いや、ほんとうは心の中に持っているのかもしれないけど、それを実現できる人はすくない。つまり僕のようにある種命がけで夢の実現に取り組めたことは幸せなのだ』そう考えればいいのだ。

僕は久々にローリングストーンズの『Time waits for No One』を聞こうとして、その曲が入っているレコードを持ってない事に気づいた。

            しょうがねえや、まあ『Black&Blue』でもいいか…

そう思いながら、レコードをターンテーブルに乗せた時その時、電話のベルが鳴った。

    『もしもし…』
 
           『  …  』

                『誰かな…?』

                      『私、…お医者さんが病気だって…』


ワコだった。思ってもみないワコの電話に僕はうろたえた。

    『もしもし、ワコ?病気だって…もしもし』

         『隆…、元気?』

             『ああ、かなり元気になった…』

                『私、病気だって…お医者さんがそう言った』

                     『ワコ、きっとその内良くなるよ。だから楽にいこう』

                         『   …   』
  
                             『きっと良くなるから、人生は悪いことばかりじゃない…』

電話を切ったあと、僕は激しく泣いた。ボリュームを絞ったステレオからストーンズのメモリーモーテルが聞こえていた。

♪…She got a Mind of her own. And she use it mighty fine.…♪