僕は毎日Aの運転する車の横に乗せられて被災現場に測量に行った。仕事はポールを十字に掲げ、それぞれの数字を読み上げる単純なものだった。しかし、自分にはその仕事が何か偉大なことのような気がした。『大地を診察している』、喩えて言えば、そんな風な気分だった。僕は偉大なポール持ちとして社会復帰したのだ。
Sさんはじめ、建設課の人達はみんな優しかった。中学の頃の僕が普通の少年だったこと、親父が真面目で村の人たちの為に色々尽くしていたことが原因だろう。偉大なるポール持ちは、たくさんの人に支えられながら、すこしずつ感情を取り戻そうとしていた。
Sさんは不思議な人だった。まだ28歳くらいだったはずだが、若者という言葉は彼には似合わなかった。老賢者という言葉が似合いそうなその口調と物腰。彼をそうさせたものは何なのか。その当時はわからなかった。
僕は太陽と愛によって少しずつ変質しはじめていた。それは今までの自分には想像できないことだった。僕が作った漆黒の愛と憎しみで彩られたうたの世界とは違い、カラフルで暖かい世界。しかし、それは僕には眩しすぎて似合わないような気がしていた。
ある日、Sさんの車の横に乗せられ、ふたりでじっくり話す機会があった。彼は建設省の試験を受かっていたのに、家族のことを考え地元の役場に就職したこと。税金を浮かせるためにできるだけ外注を使わず、設計を建設課の職員で行っていることなど…。自分とは全く正反対の考え方に僕は恐縮してしまった。つまり、人は人の為に生きることもできるんじゃないか?なんて思った。そう思ったら、自分のいる場所は一体何なんだろう?ってことも気になってきた。僕を苦しめるアルバトロスは神の使いではなく、僕のエゴが凝縮したものかもしれない?なんて思い始めた。
村の中ほどにある小高い丘に登り、Sさんと僕はしんみり話していた。
『これからますますこの村は大変になるだろうな。誰も農業で食えるなんて思ってない。でも、農業立村!だと村長は言う…』
『国から予算を持ってくる為ですか?』
『まあ、そうかな…。だから、そのお金で道路を作る。何十年後かにきっと役立つと思う』
まるで老人のような面持ちでSさんは僕を見てそう言う。
『Sさんはきっとヨーダなんだ…』
僕は心の中でそっとそう思い、何事もなかったように煙草に火をつけた。
Sさんはじめ、建設課の人達はみんな優しかった。中学の頃の僕が普通の少年だったこと、親父が真面目で村の人たちの為に色々尽くしていたことが原因だろう。偉大なるポール持ちは、たくさんの人に支えられながら、すこしずつ感情を取り戻そうとしていた。
Sさんは不思議な人だった。まだ28歳くらいだったはずだが、若者という言葉は彼には似合わなかった。老賢者という言葉が似合いそうなその口調と物腰。彼をそうさせたものは何なのか。その当時はわからなかった。
僕は太陽と愛によって少しずつ変質しはじめていた。それは今までの自分には想像できないことだった。僕が作った漆黒の愛と憎しみで彩られたうたの世界とは違い、カラフルで暖かい世界。しかし、それは僕には眩しすぎて似合わないような気がしていた。
ある日、Sさんの車の横に乗せられ、ふたりでじっくり話す機会があった。彼は建設省の試験を受かっていたのに、家族のことを考え地元の役場に就職したこと。税金を浮かせるためにできるだけ外注を使わず、設計を建設課の職員で行っていることなど…。自分とは全く正反対の考え方に僕は恐縮してしまった。つまり、人は人の為に生きることもできるんじゃないか?なんて思った。そう思ったら、自分のいる場所は一体何なんだろう?ってことも気になってきた。僕を苦しめるアルバトロスは神の使いではなく、僕のエゴが凝縮したものかもしれない?なんて思い始めた。
村の中ほどにある小高い丘に登り、Sさんと僕はしんみり話していた。
『これからますますこの村は大変になるだろうな。誰も農業で食えるなんて思ってない。でも、農業立村!だと村長は言う…』
『国から予算を持ってくる為ですか?』
『まあ、そうかな…。だから、そのお金で道路を作る。何十年後かにきっと役立つと思う』
まるで老人のような面持ちでSさんは僕を見てそう言う。
『Sさんはきっとヨーダなんだ…』
僕は心の中でそっとそう思い、何事もなかったように煙草に火をつけた。