『岬に待つ恐怖』
《亀裂❸》
あの不思議で忌まわしい出来事から一年目を迎えようとする時、教育委員会と県警が協力して事件を忘れないようにしようという行事を計画したが県民どころか『岬』周辺の住民を動かすことも出来なかった。
この時を境に小学生の失踪
事件は街の話題にならなくなっていったのだ。
この年、水盛は親類の紹介から消防署の職員となった
。
織田は政権与党の事務職員になり、今の市長の立場へ一歩近づいた。
土井は警察組織の昇格試験も着実に合格してこの頃には巡査部長になっていた。
三人の交流は相変わらず無かったが、運命的な何かが彼等を引き寄せていることにまったく気がついていなかった。
織田と水盛そして土井は互いの存在を意識してはいたが、それぞれの人生に必死になって取り組んでいる内に自分以外の二人のことを忘れるといった様相を呈していた。
三人にしてみれば、小学生の失踪事件は悲惨で嘆かわしい事ではあったが、日々の生活の中で、置き場所を心の片隅に追いやっていたのかも知れない。
彼等の心の変化と同様に人々の心からも、小学生失踪事件は消えてしまったようだった。
かなりの人数が居るはずの遺族や関係者も、それぞれ整理を着けたのか沈黙した
。
静かに時は流れてゆく。
三人が三十代の半ばに入った頃『岬』に新たな事件が起こった。
