秋津由理恵が見たという
不思議な夢が、しかも三日もそれは続いたという。
それを聞いた城所浩一は、どうしても由理恵の夢が何だったのかを明確にしたいと思い、とりあえず戸籍謄本を由理恵に取るように指示しだが、手に入れた謄本からはあまり収穫はなかった。
過去帳のような物は無いかと探したが、そのような物も見つからなかった。
一週間が過ぎた。
暗礁に乗り上げた二人に光明が差した。
秋津由理恵の故郷に在る古い寺から話が持ち上がって来た。
九十近い老住職が、何処から噂を聞いたのか、秋津由理恵の親族の家に寺の若い僧に電話をかけさせて来た。
その内容は秋津の家の娘が不思議な夢を続けて見た事に、多少怯えていて自分の
先祖の何か因縁でも有るのかといろいろ悩んでいると聞いて寺の方へ来てくれれば、娘さんのいろいろな知りたい事について話しましょう、という内容だった。
ひとつ不思議な事は、秋津由理恵はもちろん、彼女に係る誰もが、この話を他言していないことと由理恵の状況さえ知らないことが実際のところだったのだ。
城所浩一も由理恵もこの寺からの連絡は不思議だった。
かと言って、過去の事を知りたい思いは抑えることも出来ず、二人揃って由理恵の郷里へ向かった。
二人は東京駅で待ち合わせて現地を目指した。
列車の車窓を流れていく風景がビル街から住宅街へと変わり、その住宅街に緑が混ざり、そこから先は田園風景になった。
会話も途絶え、二人は眠りに誘われるままに、お互いの肩を頼りに眠りについた
。
列車内のアナウンスが二人を眠りから覚まし、やがてホームへ列車は停まった。
車外に出ると、思っていた以上に外気は冷たく寒かった。
空気の冷たさよりも自分達を、どんな事が待っているのかの方が、震えを起こさせるような気がして二人は身構えていた。
自分達は此処で何かを掴み取る事は間違いないと、そんな確信が二人の心の中で広がって行くのだった。
続く。