まだタイトルが・・・ | 高田龍の《夢の途中》

高田龍の《夢の途中》

気がついたら、72歳に成ってました。
今までずいぶんたくさんのことを書いて来ました。
あと何年生きられるのか判りませんが、書き続ける事が生存確認でも有りますし生存証明でもあります。
宜しくお願い致します。



厚労省から預かっている資料から三人の被害にあった人が居たという場所は彼等の現在位置から数キロだった。

百地の助手だった加藤拓也が四輪駆動車で百地と木村良平を此処まで連れて来てくれた。

待ち合わせた厚労省選出の猟師達は同じような四輪駆動でやって来た。

併せて二台のRVは現地を目指し、住宅街を過ぎ丘陵地帯を進んで行く。

田中壮一が『この辺の山はどんな物が採れるんだろう』

『山菜採りの連中は県境を越えて山に入って来たらしいですね』石川美津男がそう応える。


やがて雑木林が一層、濃く生い茂った辺りで一行はクルマを降りて茂みの奥へ向かい歩き始めた。

彼等が自分達の肩まで生い茂った草むらの中を歩いて行くとその草むらが突然無くなり、彼等の前に人の手によって整地された百坪ほどの場所が現れた。

そこには制服の警察官が三人警備に就いていた、百地が責任者と見受けられる警察官に自分達の立場と目的を簡単に説明すると警察官は『ご苦労様です、話は伺っております、遺体の方は先程市内の病院へ搬送致しました』警察官の後方に広がる草を刈った場所にはあちこちに血痕が見受けられた。


猟師の田中壮一が一歩、百地に歩み寄り『なんだかしっくりしねぇな先生、そう思いませんか』

百地はそれには無言だったが、表情は猟師の直感に同意してる。

『とにかく病院へ行って仏さんを見せて貰いましょう』

百地の言葉を合図に彼等は今来た草むらを停めてあるRV車へ向かって進んで行く

被害に遭った三人の遺体を検分するため地元の病院に向かった。

病院に着くと百地達は事件の担当者の出迎えを受けた。

弓野春雄という警部補だという担当者は日に焼けた赤ら顔に白い歯が目立つ、好感の持てる男だった。

『ご苦労様です』

笑顔で弓野が話す。

『突然うかがいまして申し訳有りません』

百地が返す。

『早速ですが、ご遺体を見せて頂けますか』

『もちろんです』

そう言うと弓野は百地達を

地階へと先導した、患者で溢れている階上とは違い地階は静かだった。

弓野に連れられて百地達は遺体が置かれている解剖室に入った。

部屋の中は思っていたより

寒かったが、この部屋の性質上仕方ない事だろう。

弓野が濃い緑色の遺体を覆っているシートのジッパーを引き下げた。


『これは・・・』

百地の口から溜息に混じるように言葉が漏れる。

田中壮一が百地の後ろから 『こりゃあ熊なんかじゃねぇ!』

百地は、田中を振り返ることも無く『熊では無い』そう答える。


彼等の眼前に横たわる三人の遺体は、今回の熊の被害者であることに今のところ間違いは無いのだが百地も狩猟経験の豊富な田中壮一も三人の遺体が熊による被害者とは思えない。

それは、動物学の第一人者として、また山野を駆け巡り多くの熊や猪を駆除して来た猟師の誇りに賭けて、否定せざるを得ないものだった。