知らされた恐怖❹
朝が来た、夏の陽射しはいつも通り照りつけ、湿り気を含んだ爽やかな朝の空気を一瞬にして暑くしてしまう。
三人は昨夜の約束の通り防波堤の上に集まっている。
織田が一番早く約束の場所に来た。
この日から三十五年後には市長になっている織田だったがこの時は想像すらしていなかったろう。
やがて土井昂が来て、最後に水盛志郎が来た。
『おはよう、昨夜は眠れたか』
織田が皆んなに声を掛ける
『とんでもない、なんかワクワクしちゃってさぁ』
『俺も同じ、ぜんぜん眠れなかった』
織田に声をかけられた二人は、それぞれ想いを返す。
それから、かなりの時間夏の太陽に照らされながら三人は岩場を何か手がかりは無いかと探し回ったが結局何も見つけることは出来なかった。
それから何日もの期間、岩場をくまなく調べたが結果は同じだった。
考えてみれば、考古学や古い歴史になんの知識も無い三人では無理な事だったのかも知れない。
ある日、永い夏の一日が終わろうとする頃、水平線の向こうに陽が沈もうとしていた。
いつものように三人は、織田の家の二階に集まっていた。
『俺、考えたんだけどさぁ』
織田が話し始める。
二人は耳をそばだてる。
彼の話は、岩場に彫り込まれた階段状の物についてだった。
自分達は、海底から岩場の上に向かって掘られていると思っていたが、あれは岬から海の深い処へ向かって降りているのではないだろうかという逆転の発想だった。
あの岩場はもちろん、岬全体に登って行って、などという場所は見つからないし
古い話にも、あの辺りに何かが有ったという言い伝えもない。
遠い昔、あの辺りが地殻変動か何かで、地形が大きく変わったのかもしれない。
海の深い処を捜査するには三人には手立てがない。
潜水機材だけでなく、自分達には歴史的知識も考古学についての見識も無い。
これは俺達の手には負えない事のように感じる。
三人の秘密にして、他言無用と言ってはみたが、これ以上は誰かに協力してもらうか、自分達がもっと大人になって社会的に立場をつくってから改めてやるか。
織田の話の概要はこういうものだった。
二人は黙っていた。
というより反論の余地がなかったというのが実際のところである。
土井昂が口を開いた。
『協力者を探すにしろ、俺達が大人になってからにしろ、ゆっくり時間を掛ければいいと思うよ俺は、だってあの岬に何か大変な物が有るかもなんて誰も知らないんだし、知っているのは今も昔も俺達だけなんだから』
『慌てないでじっくりやろうよ』
水盛の言葉に三人の思いも決まった。
この夜、三人は幾つかの決め事をし、今後は一ヶ月に一度集まることにした。
それぞれが新たに掴んだ情報が出てくればその月一の集合の時に共有することにした。
その頃の彼等にすれば、それしか方法が無かったと言える。
こうして三人は、あの岬に
三人だけの秘密を持って生きていくことを決めた。