小説『岬に待つ恐怖』市長室の中 | 高田龍の《夢の途中》

高田龍の《夢の途中》

気がついたら、72歳に成ってました。
今までずいぶんたくさんのことを書いて来ました。
あと何年生きられるのか判りませんが、書き続ける事が生存確認でも有りますし生存証明でもあります。
宜しくお願い致します。


 


   

  『岬に待つ恐怖』
              市長室の中


朝の市長室、海から昇った太陽の輝きは海側に設えた大きな窓を通して部屋の中いっぱいに満ちている。

今その市長室にはこの街の重鎮と言える人達が集まっている。

警察署長の土井昂がいる。
消防署長の水盛志郎が隣に腰を下ろしている。
市議会の議長、武井壮一が来ているし、最古参議員の二人、松永竜二、赤木浩一が議長の両側に陣取っている。
役所の人間もいる、建設課の増田叶、産業振興課の吉野次男、二人はいずれも課長職だその二人に部下が二人づつ、来ていた。
それから、あと二人水産加工業を営む田川守、海岸沿いに観光旅館とレストランを経営する森山光一。
それぞれがこの街の高額納税者だ。

今この部屋には街に対して影響力のあると思われる人間達が揃っている。

市長はこの人達に何を話そうとしているのだろう。

『皆さん、お忙しいところをお集まりいただき本当に恐縮でございます。皆さんには本日の議題といいますか、内容についてメールや役所の人間からの連絡でご説明してある通り、この街出身の方から、大変私共にとって有難い内容のご提案があり、この街としての要望と言いますか、見解を統一しなくてはならないとの思いから集まっていただき率直なご意見を伺えればと思った次第です。』

市長は更に話を続けた。

『最初に申し上げておきたいのは、先方からの提案に、岬を中心とした場所に大規模なリゾート施設をという・・・』この言葉が織田市長の口を吐いて出た時、それまで沈黙して市長の話を聞いていた人間達の中から数人の人間が驚きの声ををあげた、それから彼等は何か恐ろしいものでも見たような表情になっていた。

市長の言葉の意味する事が判る者も判らない者も、今この部屋に集った人間全員が眼に見えない何かに押し潰される様な、重く息苦しい空気の中に閉じ込められていた。