銀座のClub《鳳》の中で尊
は仁和会の工藤と向き合っていた。
「小田さんよ、一億は小田さんが出してくれるんだよね、俺ら、の方は責任持って弁護士を黙らせるよ」
「まさか金は出さないけど弁護士は黙らせろ、なんて虫のいい話じゃないよね、小田さん」
「どなたかに立替えをお願いしてるんですよね、そちらに一億返さなくてはなりませんからね代行」
「当然だよ、借りてるんだから、ヤクザ風吹かすわけじゃないだろうな堅気のくせに」
「そんなことはしません当たり前のことじゃないですか」
「それならいいんだよ」
「代行、ところでもうひとつびっくりした事があるんですよ」
「まだなんか有るんか」
「実はね代行その一億を立替えたのが、丸山とかいう不動産屋らしいんですよこれがなんとあんたの企業舎弟じゃないですか」
尊の話は工藤の本丸へ突き進んだ。
平静を装ってはいるが工藤
は穏やかではない。
尊は、それまでとは明らかに違う態度で工藤に向かっている。
「工藤さん、後か先かは知らないよ、だけどこれ今の段階じゃあんたが仕掛けてるんだろ」
今回の美人局の騒動を計画したのが、弁護士や不動産屋が考え出したとしても、最終的には工藤が仕切っているだろうと尊は思っていた。
「引退して堅気になって大人しく隠居してりゃあいいものを、爺さん長生きしたくねえらしいな」
工藤が言った瞬間、三人の
組員は尊の、身体を押さえようと動いた。
それをかわして立ち上がった尊の手にはいつの間にか
拳銃が握られている。
「静かにしないと弾くぞ、撃たれたことあんのか、おまえ達」
それでも尊に飛び掛かろうとする組員達。
店の中に、耳を覆うような銃声が轟く。
怯む工藤と組員達。
尊は撃鉄を起こした。
「次はあてるからな」
七○歳になろうとしている
小田尊の動きは敏速だった。
数多くの修羅場をくぐり抜けて来た中で身についたものなのだろう。
尊が発砲したあと、工藤達は意気消沈したようだった。
今風のヤクザとして武闘派の呼び声の高かった工藤だが、やはり昭和の叩き上げ
の尊とは性根が違っていた。
尊は工藤に向かって「いろいろ行儀の悪いところを見せてすまなかった、これで終わりということで、いいよな」
工藤は、小さくうなづいただけだった。
Club《鳳》のあるビルの正面に出て来た尊は、徳田に電話を入れた。
「徳ちゃん、話は片付いたから、三○分くらいで戻るから、千夏に電話してやって、それじゃ」
尊の車は神楽坂へ向かって
走り始めた。