永遠の恋人 | 高田龍の《夢の途中》

高田龍の《夢の途中》

気がついたら、72歳に成ってました。
今までずいぶんたくさんのことを書いて来ました。
あと何年生きられるのか判りませんが、書き続ける事が生存確認でも有りますし生存証明でもあります。
宜しくお願い致します。

とうとうこういう日が来たと思った。

10月24日、貴女は逝去した。

享年88歳。

初めて彼女の存在を知ったのは、小学生の頃だったと思う。

NHKのテレビだった。


古い映画を放送している番組の中だった。

タイトルは、かの『蝶々夫人』。


主演は山口淑子。

年配の方はよく知っている、かの李香蘭である。

戦前、戦中、戦後と波乱に満ちた人生を送り、ハリウッドにも足跡を残した国際女優である。
結婚の為、芸能界を去ったりもしたが、数年間の沈黙を破り、フジTV『三時のあなた』の司会者として復帰。
その後、参議院議員として国政の場でも活躍した。
と、ここまで書いて私は、とんでもない間違い、記憶違いに気付かされた。

山口淑子演じる蝶々夫人が無いのである。
山口淑子の蝶々夫人の侍女のような役で出演していた八千草薫の美しさに少年時代の心を鷲掴みされたと、今の今まで思っていた。

しかしながら、それは私の記憶違いだった。

八千草薫自身が、1955年に、日伊合作映画
で、主役の蝶々夫人を演じている。

したがって、山口淑子主演の『蝶々夫人』は存在しない。

ならば、山口淑子と八千草薫が共演していたあの映画は、いったい何だったのだろう。

半分ムキになって、探した。

そうしたら、あった。

1956年『白夫人の妖恋』。

主演は山口淑子。

共演者の中に八千草薫がいる。

あの『白蛇伝』をモチーフにした内容のストーリーである。

そこに登場する八千草薫の美しさを、私は今でも忘れない。

十歳になったかならないかの私の心を彼女の美しさは完全に射抜いた。

それから半世紀以上が過ぎたが、数え切れないほどの美しい女優やタレント、歌手やモデルを見てきたが、彼女を超えた女性は私の中にはいなかった。

そして、いつしか何処かで彼女に逢えないものか、と思うようになって、その思いはどんどん私の中で膨らみ、ついに一緒にいたいとまで、思うようになってしまった。

だから私は、何の恨みも無いが、谷口千吉が大嫌いだ。

監督した作品がどうとか、そういうことでは無い。

生理的に八千草薫の夫だという事が許せないのだ。

鬼籍に入って久しい谷口監督にしてみれば、迷惑な話だと思う。

八千草薫が愛した男。

羨ましい限りだ。

私は、彼女が亡くなる前日だったとしても、一緒に暮らしてくれると言うなら、喜んで受けた。

七十過ぎた頃にも、そう思っていた。

彼女が八十を向かえた時にも同じ気持ちだった。

私にとって、八千草薫は永遠の恋人なのだ。

自分の思いが少し気持ち悪くなってきたので、今日はこのへんで終わることにしよう。