ホンモノとニセモノ | 高田龍の《夢の途中》

高田龍の《夢の途中》

気がついたら、72歳に成ってました。
今までずいぶんたくさんのことを書いて来ました。
あと何年生きられるのか判りませんが、書き続ける事が生存確認でも有りますし生存証明でもあります。
宜しくお願い致します。

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かつて『永遠の0』を観た私は、このBlogに鑑賞記を書いた。

原作者の百田尚樹という人にも興味がわいたので書店で『永遠の0』以外の氏の著作を手にとったが、結局買うことはなかった。

出版不況と言われて久しい時代に氏の書く著作は売れに売れているそうだ。

私は、『永遠の0』の宮部久蔵という海軍将校が、あの時代の職業軍人としては珍しいほどに生に執着する姿、特攻を美化せず、生命の大切さを公言してはばからず、部下にも犬死にするべきではないと教え、聴く耳を持たない上官だけでなく、部下にさえ憶病者呼ばわりされながら、自身の信念を貫き、やがては、その信念の完遂が叶わぬことを悟り、愛する妻子の未来のために策を講じて、自らは類い稀なる操縦技術をもって、見事に敵戦艦を撃沈して果てた。

百田尚樹氏は、この主人公の生き方に万感の思いを託したのだろう。

私はそう思った。

戦争という悲惨で残酷なものに、人間は絶対に関わってはならない。

いったん始めてしまえば、どんなに平和を希求していたとしても、逃れることなど出来ない。

だから、戦争は絶対にしてはいけないんだ。

そう言う思いで百田尚樹氏はあの『永遠の0』を書きあげたと私はずっと思っていた。

《中国がどっかの島を占領でもすれば沖縄の人たちも判るだろう》という主旨の発言を氏が自民党の一部議員の前で講師という立場で語ったという。

《沖縄の新聞社二社を潰せ》という主旨の発言もあったという。

議員達は、テレビや他のメディアが騒ぎ立てるから、憲法問題も基地問題も進展しない。

広告を出さない、スポンサーにならなければいい。

こんな事を政権与党の自民党の国会議員が真っ昼間に語りあっていることの方が、大問題だろう。

政治家の矜持もなにもあったものではない。

左翼だ右翼だの問題ではない。

はじめから答えは出ているのだ。

それは 、いかなるイデオロギーの下にあろうと戦争を肯定することと、戦争を惹起させる事柄に手を出してはいけないということだ。

沖縄の人たちが、基地を容認しない。なぜ理解してくれないのだと、首をかしげ、疎んじる人たちの方が、理解に苦む。

太平洋戦争で、本土の盾となって沖縄は焼け野原にされ、沢山の民間人の犠牲者も出した。

終戦を迎えても、沖縄には試練が続いた。

長い間、沖縄は日本ではなくなった。

本土を占領から守るために。

復帰を果たしたあとも、沖縄には、米軍基地が残った。

70年間、沖縄の人たちに真の終戦はおとずれていない。

沖縄の人たちは、そこに基地があることが原因の、悲惨な事故や事件に巻き込まれ続けてきた。

彼らが、沖縄に基地を置かないでくださいと叫んだからといって、誰がそれを咎められるのか。

生まれたばかりの赤ん坊が老人になるほどの時間、日本人は沖縄に重過ぎる荷物を無理やり背負わせ続けてきたのだ。

愛する妻子、父母を残し死んでいった多くの戦士達は、後世の平和のために逝ったのだ。

《俺たちの敵討ちを頼む》などとは絶対に言わないはずだ。

彼らの犠牲の上に、恒久平和の実現に必死になることが、残った者たち、後継の人たちの使命のはずだ。

どうしても、辺野古に基地をと言うならば、土下座してお詫びして、お願いするべきではないだろうか。

新聞社を潰せだの、中国が攻めて来たら判るだろうなどと、口が裂けても言えることではない。

テレビ界から躍り出た放送作家は、テーマより、コンセプトより、やはりウケるかウケないかが判断の基準であり、大事なのだろう。

『永遠の0』の宮部久蔵の語ることが、あまりに父の言っていたことや行動に似ていたために、私は大きな勘違いをしていたようだ。

百田尚樹氏はエンターテイメント小説を書いたのだ。

彼は、軍事力をもって中国の抑止力になる国家を創りたいのだ。

《あれは、冗談だった》の様に氏は弁明しているようだ。
《本当に潰したいのは、朝日、毎日、東京だ!》
と、言ったとか、事実なら笑止千万だ。
 
彼は、ホンモノではない。

彼は、ニセモノなのだ。

財力持ち、社会的立場も固めた氏が、憲法問題や沖縄問題に関して、冗談を言える場所など地球上に存在しない。

亡くなって十七年が経つ私の父は、あまり戦争について多くを語ることはなかったが、私が忘れられない言葉がある。


《始まってしまえば、戦いから逃れることは出来ない。やらなくてはならなくなる。だから戦争は絶対にしてはいけないんだ。》


百田尚樹氏も、勉強会で馬鹿な発言を得意げにした議員達は、自らが銃を取り、銃弾の飛び交う戦場に立ち、そこで語りあってみることだ。