共有名義(きょうゆうめいぎ)の不動産。話し合いを、後回しにしていませんか。これは私が40年見てきたなかで、いちばん「こじれる形」です。

先に、結論から言います。共有名義は、置いておくほど、ほどけなくなります。そして、早く手をつけた人が、いちばん得をします。これだけは、はっきりしています。

なぜ、共有名義は動かせないのか

共有(きょうゆう)というのは、一つの不動産を、何人かで分け合って持っている状態です。兄弟で実家を相続した。そういうケースが、いちばん多いです。

やっかいなのは、ここからです。共有の不動産は、誰か一人の一存では、全体を売ることができません。

民法でも、不動産を丸ごと売る、大きく造り変える、といった行為には、共有者(きょうゆうしゃ)全員の同意が必要、と定められています。

つまり、五人で持っていれば、五人全員が「はい」と言わないと、売れません。一人でも「いやだ」と言えば、止まります。一人でも連絡がつかなければ、それでも、止まります。

これが、共有名義の、いちばん怖いところです。

相続が重なると、共有者はねずみ算で増える

そして、もっと怖いのが、時間です。

共有のまま放っておくと、共有者の誰かが、いつか亡くなります。すると、その人の持分(もちぶん)は、さらにその子どもや配偶者へと、相続されていきます。

二人だった共有者が、気づけば、五人、十人。これを、数次相続(すうじそうぞく)といいます。

そうなると、どうなるか。会ったこともない、遠い親戚と、実家をどうするか、話し合わなければいけません。住所も知らない。電話番号も知らない。そういう方の同意を、一人ずつ、取りつけていく。

想像してみてください。これは、本当に、骨が折れます。

「今は困っていない」が、いちばんの落とし穴

共有名義のご相談で、いちばん多いのが、この言葉です。「今は、特に困っていないんです」。

でも、これが、落とし穴です。

若い頃、兄弟で「とりあえず、仲良く半分こにしよう」。そう決めた。あのときは、それでよかったのです。

でも、年月がたてば、それぞれに家庭ができます。考えも、暮らしも、お財布の事情も、変わります。お金が必要な人。思い出として残したい人。早く売ってしまいたい人。立場が、バラバラになっていきます。

若い頃の口約束は、世代が変われば、守られないことがあります。残念ですが、これが現実です。だからこそ、困っていない今が、いちばん話し合いやすい時期なのです。

正直なところを、お話しします

ここで、現場の本音を、ひとつ。

「全体は売れない」と言いましたが、自分の持分(もちぶん)だけなら、じつは、一人でも売れます。持分だけを専門に買い取る業者も、世の中にはいます。

でも、私は、おすすめしません。持分だけの売買は、たいてい足元を見られて、安く買い叩かれます。そして、その業者が新しい共有者として入ってくると、残されたご家族は、前よりもっと、話し合いにくくなります。

いちばん得なのは、バラバラに動くことではありません。共有者みんなで、一つにまとめて、まるごと売る。これが、いちばん高く、いちばん円満に終わる道です。

出口は、三つしかない

共有名義の出口は、突きつめれば、三つです。

売るのか。誰か一人が、ほかの持分を買い取って、引き取るのか。それとも、このまま持ち続けるのか。

どれが正解かは、ご家族によって違います。でも、大事なのは、「決めること」そのものです。決めずに先のばしにすること。それだけが、はっきりと、損になります。

話し合いが、どうしてもまとまらなければ、最後は、裁判所に分割を求めることもできます。共有物分割請求(きょうゆうぶつぶんかつせいきゅう)といいます。でも、時間もお金もかかり、なにより、ご家族の関係に、深い傷が残ります。

そうなる前に。まだ、みんなが顔を合わせて話せるうちに。手をつけておくことです。

「うちは、まだ大丈夫」。そう思っているうちが、いちばんの動きどきです。

私は、地元・白井で40年、相続のからんだ共有名義の不動産を、いくつも見てきました。誰に、どう声をかけ、どうやって一つにまとめていくか。その段取りこそが、地元の不動産屋の仕事です。

まずは、今どうなっているのか、現状を整理するところから。無理に話をまとめることは、しません。

直近で、実際に取り扱ったケース

所要時間1年。

兄弟5人で妻も子もいない男性がなくなり、残された兄弟4人で相続。

姉・兄・兄・妹(依頼人)の4人。依頼人(妹・単身)が亡くなった方のいろいろな面倒をみていた。長兄・次兄は事情を鑑み末の妹(依頼人)にすべてをと結論。長女は納得せずに、弁護士をたてて紛争へ。依頼人も弁護士を立てて調停へ。ま、こんなケースがありました。

無事着地したのですが、考えさせられる案件でした。

住宅流通合同会社

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※共有不動産の扱いは、2021年(令和3年)の民法改正(共有制度の見直し、2023年4月1日施行)にもとづいています。丸ごとの売却や大きな変更には共有者全員の同意が必要で、所在のわからない共有者がいる場合などは裁判所の手続きが用意されています。個別の判断は事案により異なりますので、実際の手続きは弁護士・司法書士・宅地建物取引士にご確認ください。出典:法務省「民法等の一部を改正する法律(共有制度の見直し)」。