中古マンションを探すとき、多くの人は室内の状態を見て判断する。壁紙の汚れ、水回りの傷み、日当たり。だが、それだけでは見えないリスクがある。

国土交通省の調査では、購入時に「共用部分の維持管理状況」を重視した人はわずか12.0%にとどまる。

結論:買っているのは部屋ではなく、管理された建物である

中古マンションは、専有部分である「部屋」を買う取引ではない。区分所有者全員で費用を出し合い、維持していく「管理された建物」の持分を買う取引である。

室内はリフォームで変えられる。しかし、共用部分の管理状態は、買った後に一人では変えられない。

確認すべきは、管理費、修繕積立金、大規模修繕の履歴、長期修繕計画、管理組合の運営状況の5点である。この5点を見ずに契約すれば、数年後に一時金の徴収や大幅な値上げという形で代償を払うことになりかねない。

データで見る管理不全のリスク

国土交通省「令和5年度マンション総合調査」(2023年10月〜2024年1月、全国約4,300管理組合を調査)によると、長期修繕計画上の積立額に対し、実際の積立額が「不足している」と答えた管理組合は36.6%にのぼる。3件に1件以上である。

うち、不足幅が20%を超える管理組合は11.7%。修繕積立金の月額平均は13,054円で、前回調査より1,811円上昇した。

積立方式は、新築時の負担を抑えて段階的に値上げする「段階増額積立方式」が47.1%、当初から一定額を積み立てる「均等積立方式」が40.5%である。段階増額方式は、値上げの都度、総会での合意形成が必要になる。値上げが計画通りに進まなければ、それがそのまま積立不足につながる。

管理費・修繕積立金を3ヶ月以上滞納している住戸があるマンションは30.1%。老朽化対策について「議論したことがない」管理組合は66.1%にのぼる。1984年(昭和59年)以前築の旧耐震マンションでは、世帯主が70歳以上の割合が55.9%に達しており、管理組合の担い手不足も進行している。

具体例:積立不足が表面化するとき

段階増額積立方式のマンションで、新築時に月5,000円だった修繕積立金が、計画では5年ごとに1万円、1万5,000円と上がる設計だったとする。

値上げの総会決議が一度でも見送られれば、積立額は計画から乖離していく。国交省のデータでは、この方式を採用した管理組合249例のうち、計画当初から最終年までの増額幅は平均で約3.6倍、上位42例では平均約5.3倍に達している。

積立不足のまま大規模修繕の時期(一般に12〜18年周期)を迎えると、工事の延期、内容の縮小、あるいは一時金の徴収という選択を迫られる。一時金は戸あたり数十万円規模になる例もある。修繕積立金の値上げには総会の決議が必要であり、区分所有者間の合意形成が難航すれば、工事そのものが進まないケースもある。

購入前に確認すべき具体的な資料は次のとおりである。重要事項調査報告書、長期修繕計画書、直近の大規模修繕工事の実施履歴、管理組合総会・理事会の議事録、管理費・修繕積立金の滞納状況、そしてマンション管理計画認定制度(2022年施行)の認定有無である。認定を受けているマンションは、一定水準の管理体制が行政によって確認されていることになる。

注意点:管理会社に任せているから安心とは限らない

管理会社が入っているからといって、管理組合が機能しているとは限らない。管理会社は事務を代行する立場であり、意思決定を行うのは区分所有者による管理組合である。

長期修繕計画は5年ごとの見直しが目安とされるが、実際に定期的な見直しを行っているマンションは約63%にとどまる。計画自体が古いままでは、積立額の妥当性を判断できない。

室内のリフォームは、購入後に自分の判断と費用で実行できる。だが、共用部分の管理体制、修繕積立金の水準、管理組合の運営は、区分所有者の総意によってしか変えられない。ここが、専有部分と共用部分の決定的な違いである。

まとめ

中古マンション購入では、次の5点を契約前に確認する。

一つ、管理費と修繕積立金の月額。

二つ、直近の大規模修繕がいつ、どの範囲で行われたか。

三つ、長期修繕計画の有無と見直し時期。

四つ、修繕積立金の積立状況(不足の有無)。

五つ、管理組合が実際に機能しているか(総会の開催状況、滞納状況)。

室内の印象だけで判断せず、これらの資料に目を通す。それが、購入後の資産価値と暮らしを守る最初の一歩である。

出典:国土交通省「令和5年度マンション総合調査」/国土交通省「長期修繕計画作成ガイドライン」/マンション標準管理規約/マンション管理適正化に関する指針

 

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