「さて、行こうか。」

サウザードが長剣を鞘に落とし込むと、アレスが答えるように羽ばたいた。

アレスの後方には、数頭の氷竜と白竜の小隊が控えている。

サウザードが軽々とアレスの背に飛び乗った。
アレスの背には金具が固定されており、そこに靴の金具を填めると、こ気味いい音が響いた。

この金具によって、サウザードは上昇下降を体重移動でアレスに伝え、意のままに空を翔る事ができる。

「皆、命を無駄にするなよ。」


アレスが大きく翼を動かした。

次の瞬間、その足は城壁を離れ、遮る物のない宙へ躍り出た。

向かい風だ。

重力からの解放。

何もない空。

遙か彼方まで広がる世界。

曲がりくねった川が細く長く続いている。

大地を飾る深緑の森。

平原の縁は山々が次第に高くなる峰を並べているが、それさえも眼下に見下ろす高度だ。

空はどこまでも青く、広く、痺れるほどに自由だ。

ドラゴンは素晴らしい速度で宙を滑って行く。

サウザードは深く息を吸い前方を見つめた。

空を悪しき色に染める黒竜の群が近づいて来るのが見える。

「さあ。始めようか。」

サウザードが笑みを含んだ口元で呟くと、空間を震わせるアレスの吠吼が轟いた。