皆さん、こんにちは。
久しぶりに時間ができたので書いています。
「Never put anything smaller than your elbow in your ear.」
(耳に肘より小さいものを絶対に入れるなよ)
これは、私が後期研修医だった頃に、指導医の先生が念仏のように教えてくれた言葉です。
「ちょっと待てよ、耳に肘がはいるはずがない!」という方もいるでしょう。
私の知る限りでも、耳に肘が入るような器用な方は、未だかつて見たことがありません。
実は、これは英語で「耳に何も入れるべきでない」ということを皮肉的に語られているのです。
世界は「耳かき」の信者
私の知る限り、日本は耳かきが大好きな国です。
私も幼少期の頃、親から「耳はきれいにするものだ」と教えられました。
そして、母親の膝枕の上で耳かきをしてもらうのが凄く楽しみな時間でした。
人によっては、お風呂上りに必ず綿棒を使い高揚感を得る方もいるかもしれません。
実は、耳かきが好きなのは日本だけではありません。
あるアメリカの研究では、90%の人が「耳は定期的に掃除するべき」だと回答しています。
さらに、その回答者の多くは「子供の耳も定期的にきれいにしている」と回答しました。
耳かきをしないと耳は汚なくなるの?
実は、耳には自浄作用があり、ほとんどの人が耳を定期的に掃除する必要はありません。
耳垢は外耳道にある腺から分泌・生成されます。
そのままにしておいても、顎の動きにより自然と耳の外に移動していきます。
そして、外耳道の乾燥を防ぎ、汚れ、ほこりや虫から外耳道を守ります。
つまり、耳垢は単に汚いものではなく、「本来耳の正常な機能のために必要なもの」だともいえます。
耳かきはそもそも耳に良くない
くどいようですが、耳かきのような細く鋭いものを、絶対に耳に入れないでください。
アメリカ耳鼻咽喉科学会によると、
綿棒や耳かきなどを耳に入れることは、外耳道に耳垢を押し戻すだけでなく、「鼓膜や外耳道に傷つけてしまう」ことになります。
そして、頻回の耳かきは外耳道の感染の原因であり、安易な耳かきには十分注意が必要です。
(https://www.entnet.org/content/aao-hnsf-clinical-practice-guideline-earwax-removal)
「どうしても耳を掃除したい!」と衝動に駆られている患者さんには、お風呂後に耳の外側をそっとティッシュで拭くだけに留めるように勧めています。
あなたは耳垢がたまる人?
実際は、20人に1人の成人が「過剰な耳垢により耳の穴が閉塞」しています。
耳垢栓塞(じこうせんそく)といって、放っておくと耳垢がたまり閉塞する症状です。
耳垢栓塞(じこうせんそく) の症状
●耳閉塞感(耳が詰まったり、何かが充満してしまっているような感覚)
● 耳痛
● 聞こえの感覚や聴力の変化
●耳鳴り
特に、老人、閉塞した既往歴がある人、小児、知的障害のある方に多いです。
原因は、「耳垢の過剰生産の刺激」や「正常な排泄機能の障害が原因」だといわれています。
もしあなたが「放っておくと耳垢がたまり閉塞(耳垢栓塞)する」一部の方であれば、下記の「家でも簡単にできる予防対策」が必要かもしれません。
家でも簡単にできる「耳垢予防対策」
あなたが耳垢が溜まりやすい一部の方々であれば、以下の簡単な方法で「耳垢予防対策」をしましょう。
それは、「耳垢を柔らかくする」こと。
1日1度、オリーブオイル、ミネラルオイル、ベビーオイルなどを数滴、外耳道に入れてください。
耳垢が湿った状態に保たれ、柔らかくなり、耳の外に出やすくなります。
※ちなみに、意外と日本ではあまり広く知られていないようですが、「点耳薬」をAmazon、楽天、iherb などの通販サイトにて、処方箋なしで安く購入することもできます。
(下記は執筆時に市販されているものの一例です)
①https://jp.iherb.com/pr/NutriBiotic-Ear-Drops-with-Grapefruit-Seed-Extract-plus-Tea-Tree-Oil-1-fl-oz-30-ml/4718?refid=33a482a2-5282-450f-b815-1e29f17b49d7&reftype=rec&rec=iherb-pdp-featured
②https://jp.iherb.com/pr/Wally-s-Natural-Organic-Ear-Oil-with-Garlic-and-Mullein-1-fl-oz/61116?gclid=EAIaIQobChMI49KA_Knk5gIVV1pgCh1vnAaXEAkYASABEgJKa_D_BwE&gclsrc=aw.ds
耳がどうしてもかゆい時はどうするの?
そんな時はまず「かゆみの原因を特定、治療」するべきです。
外耳道は、様々な皮膚疾患が発症しやすい場所で、アトピー性皮膚炎、脂漏性皮膚炎、乾癬などの慢性皮膚疾患や外耳道炎などの感染が隠れている可能性があります。
悩んでいないで、まずは耳鼻科の先生や総合診療医に相談してみてください。
「Never put anything smaller than your elbow in your ear.」
(耳に肘より小さいものを絶対に入れるなよ)
皆さん、定期的な耳かきは止めましょう。