日本の農薬規制はとても厳しい【解答編】 | 『最近blogを見るのが楽しかったから自分でもblog作ってみました』的blog(笑)

日本の農薬規制はとても厳しい【解答編】

日本の農薬規制はとても厳しい【解答編】

さてさて、【問題編】の方はいかがでしたか?

最初にお詫びしておきたいのが、私自身も少々知識不足な状態で問題を作成してしまったという点です…手がかりが少なすぎました;

実際の農薬規制はこれ程単純なものではありません。

しかし、出来るだけ分かり易く説明しようとした結果、この様な問題内容になってしまったことを理解して頂いた上で、以下の【解答編】を読んで頂けると幸いです。

…というか、間違えていたら指摘して下さい~!!

まず解答を始める前に、「残留農薬の規制法」について説明します。

規制法には基本的に2つの考え方が存在します。

①ネガティブリスト法

使用する農薬は原則的に自由

「残留してはならない農薬」をリストに登録。

②ポジティブリスト法

原則的に全ての農薬残留を禁止

「残留を認める農薬」をリストに登録。

さて、皆さんはこの2方式にどの様な印象を持ちましたか。

①は「ん?ネガティブ??はぁ?何でも使って良いのかよ!?」

②は「おぉ、ポジティブ・シンキングやねっ!(?)かなり厳しく取り締まってるねぇ、関心関心。」

…というのが、一般的な感想でしょうかね(笑)

では、改めて補足説明を加えてみましょうか。

①ネガティブリスト法(日本のこれまでの方式)

使用する農薬は原則的に自由。

「残留してはならない農薬」をリストに登録。

249種類の農薬に残留基準値を設定し、それ以外の種類の農薬残留については規制がない。

②ポジティブリスト法(日本の2006年5月29日以降の方式)

原則的に全ての農薬残留を禁止。

「残留を認める農薬」をリストに登録。

約800種類の農薬に残留基準値を設定し、それ以外の種類の農薬残留については原則禁止。

ふむふむ、つまり①に比べて②では規制する農薬の種類が増えた訳ですね。

消費者にとっては、食べ物の安全性がより確保されたことになりますね。

ここで②について、1つ気に留めて欲しい部分があります!

「残留を認める農薬」といっても、もちろん残留基準値を超えてはいけません。

「それ以外の種類の農薬残留については原則禁止」、これは残留が全くのゼロではなく、「人の健康を損なうおそれのない量(一律基準値)=0.01ppm以下」を設定しています。

0.01ppmとは、200Lの浴槽500杯分に対して1mLの残留を意味します。

(…ここまで書いて、やはり問題の作り方が悪かったことを後悔;)

ではここで問題を見てみましょう。

ポイントは太字で示しています。

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2006年の夏。

農業を営んでいる神龍さんは、自宅付近の隣接した3つの畑で今年も米とトマトと梨の栽培を始めました。

風がとても気持ちの良い快晴の日、害虫が気になってきた神龍さんは、それぞれの畑で農薬を適量散布しました。

具体的には、

米 : 農薬A、農薬B、農薬C

トマト : 農薬A

梨 : 農薬B

を散布し、毎年出荷している時と同様に、農薬が残留しないように注意しました。

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【解説】

2006年の夏。

…ということは、ポジティブリスト制が施行されていますね。

隣接した3つの畑、風がとても気持ちの良い。

神龍さんは、風が気持ち良く吹いている日に色々な農薬を散布してしまいました。

(はっきり言って、そんなアホな農家はいません、ごめんなさい(泣))

農薬AとB

確かに農薬Aはトマトで使われています。

確かに農薬Bは梨で使われています。

でも、ここで考えてみて下さい。

もし、水田で米に散布した農薬AとBが隣のトマトと梨の畑に風に乗って飛散(ドリフト)してしまったら…

せっかく適量の農薬をトマトと梨に散布したのに、飛散した農薬のせいで残留基準値をオーバーする可能性があります!!

てかオーバーしたんです(無理矢理その1;)

これはポジティブリストは関係なく、常識として注意しなければならないことです。

よく考えたら、米もオーバーする可能性がありますね…(´Д`A;

農薬C

トマトでも梨でも使われていない農薬C。

でも、ここで考えてみて下さい。

もし、この農薬Cがトマトと梨のポジティブリストに登録されていなかったら…

てか登録されてなかった上に、簡単に飛散しちゃったんです(無理矢理その2;)

たった0.01ppmですよ?

200Lの浴槽500杯分に対して1mLの残留ですよ?

簡単に飛散する量だと思いませんか?

この基準値を超えたらアウトです、トマトも梨も商品になりません。

以上から、答えは

『米に散布した農薬が隣接しているトマトと梨の畑に飛散して残留したから』

でした~。

ここで補足しておきますと、米とトマトと梨という農作物のチョイスは適当であるという点です。

このポジティブリスト制によって、一番問題となるのは…

マイナーな作物とマイナーな農薬

なんです。

問題で出しといて言うのも変な話なのですが、米もトマトも梨もメジャーな農作物ですよね。

だから大体使うべき農薬は決まってくるので、米とトマトと梨にリスト登録されている農薬を使えば問題ないのです(多分)。

マイナーな作物っていうのは、それだけ使う農薬も限られる場合があります。

マイナーな農薬っていうのは、メジャーな農作物のポジティブリストに登録されていない場合が多いらしいです。

じゃあ農薬を登録しろよ!!

…と思いますよね?

でもそれも簡単な話ではないようです。

ポジティブリストに農薬を登録するには何十万??というお金がかかるそうです。

もちろん農薬を登録するのは農薬会社。

マイナーな作物のマイナーな農薬っていうのは、マイナーなだけに需要が少ない

だから農薬会社も積極的に登録しない。

だから使える農薬が少ない!!

…と改良普及員の先輩が教えてくれた気がします。

私の理解が正しければ;

ポジティブリスト制によって、残留農薬のチェックが幅広くなったことは、消費者的にもとても喜ばしいことだと思います。

でも場合によっては、たった0.01ppmの濃度の農薬に一喜一憂しなければならないのです。

まさに「風任せ」…と冗談でも言えませんよ(ちょっと上手いけど;)

農家にしてみれば死活問題ですからね、大半の農家さんはプライドを持って仕事をしています。

自分達で作った農作物の農薬が怖いから、自分達は食べない…そんな人はほとんどいません。

食の安全、確かに消費者としては1番重要なことだと思います。

でもその裏には、農家のただならぬ苦労があるという事を消費者に理解してもらいたいです。