倒立する塔の殺人 | 人生にギャップアップはないんだな~

倒立する塔の殺人

 

少女を殺したのは、物語に秘められた毒ーー戦時中のミッションスクールでは、少女たちの間で小説の回し書きが流行していた。蔓薔薇模様の囲みの中に『倒立する塔の殺人』とタイトルだけ記されたその美しいノートは、図書室の書架の本に紛れてひっそり置かれていた。ノートを手にしたものは続きを書き継ぐ。しかし、一人の少女の死をきっかけに、物語に秘められた恐ろしい企みが明らかになり......物語と現実が絡み合う、万華鏡のように美しいミステリー。

 

表紙から既に美しい。

 

でも図書館で借りて読んだのは文庫版ではない方で、しかもそちらの表紙の方が美しかった。

 

なので二つ載せておこう。

 

 

一言で表すならば毒と泥をねるねるねるねして、その周りを美しさのセメントで塗り固めたような、少女特有の美しさと愛らしさと、残酷さと醜さをミキサーに入れて出来上がった流動食。

 

おお、全然一言じゃない。

 

耽美的で倒錯的で、なかなかこの世界観は出せないぞ。

 

で、気になって作者を調べてみたら、この皆川博子さん、1930年生まれなので2016年現在86歳だってよ。

 

2007年に書いたこの本は77歳の時に書かれたって。

 

因みに表紙のイラストを描いた佳嶋さんは皆川博子さんご指名だそうな。

 

 

 

 

書き出しだって格好いいんだぞ。

 

『イブであって、イヴではない。』

 

なんて、先を読みたくなるじゃないか。

 

内容は昭和20年、終戦間近の現実世界と、作中作である『倒立する塔の殺人』の本の中身を行ったり来たりしてお話が進んでいきます。

 

この形式は慣れてる人にはどうってこと無いけれど、そうじゃ無い人にはこんがらがってくるかもしれない。

 

 

 

 

ミステリーYA!ってのは小学生から読めるシリーズらしくて、これを図書館で探した時も中高生向けの棚に置いてあったしね。

 

おかげでふんだんにルビが振ってあるし文字も大きいし、小説読まない人にもぴったり。

 

正直ミステリーとしては弱いけれど、耽美的な世界にどっぷり浸かるには『この闇と光』に負けていなくってよ。

 

と、思ったら文庫版の『この闇と光』の表紙も佳嶋さんだったというね。

 

 

一読の価値はあると思います。