深川麻衣編 第七話
麻衣が倒れて一週間が経った。俺は仕事が終わると毎日麻衣の所へ通った。その日あったこと、麻樹のようすなど麻衣に話した。しかし返事はない。俺からの一方通行の言葉。はやく麻衣と話がしたい。今まで通りの楽しい会話を。そしてまた数日経った頃、俺はいつものように麻衣のところへ行った。「麻衣、ただいま」「・・・」また返事はない。「はぁ・・・」一つため息をついてベッドの隣に座り、麻衣の手を握る。「早く戻ってきてくれよ、もう限界だ・・・」そう言って俺はいつも以上に強く手を握った。その時、いつもと違う感覚が俺の手に伝わった。微かにだが握り返されたような感覚だった。「麻衣?麻衣!」俺は必死で呼びかけた。麻衣が戻って来る。そう思い何度も麻衣の名前を呼んだ。すると、ゆっくりと麻衣が目を開いた。「麻衣!わかるか?麻衣!」「・・・和・・・樹」「よかった!ちょっと待ってろよ、先生呼んでくるから!」担当の先生が来て軽い検査をした。「意識ははっきりしているようです。記憶の方も問題はないと思われます。」「よかった・・・」「腫瘍のことはわたしから奥さんにつたえましょうか?」「いえ、俺が言います。先生、麻衣をよろしくお願いします」「全力を尽くします」しかし、診察室を出て病室へ向かう足取りは重かった。どう麻衣に伝えよう。ストレートに言ってもすぐに受け入れられることではないだろうし、回りくどく言ってもあまりよろしくない。そんなことを考えながら歩いていると病室の前まで着いた。「よし!」病室の扉を開けると窓の外を眺める麻衣がいた。こちらに気づくとニコッとした。この笑顔だ。この笑顔が見たかったんだ。「和樹、ごめんね、こんなことになっちゃって・・・」「謝るなよ」「うん・・・」「それで麻衣の病状のことなんだけど」「悪いんでしょ?」「え?」「もうあらかた察しはついてるよ」「そっか・・・」「それで?私はあとどれくらい生きられるの?」「長くても半年だって」「半年・・・」「じゃあ少しでも多く思い出作らなきゃね」「・・・うん・・・」俺が想像していた麻衣の反応とは真逆だった。俺はもうあと半年しか生きられないと思っていた。でも麻衣は違った。残された半年に希望を持って少しでも多くの思い出を作ろうとしている。俺は馬鹿だった。麻衣が眠っている間、麻衣がどう思うかも考えずに勝手にひとりで悲観していた。麻衣を支えられるのは俺しかいない。残りの半年、俺は麻衣が今までの人生で一番幸せな半年だったと言えるように全力で支えることを誓った。「麻樹にはどう伝えよう」「麻樹には言わないで。あの歳には受け入れられる話じゃないの」「そうだな。麻樹のことは任せておけ」「よろしくね」「じゃあ今日は帰るね」「うん、またね」俺は麻衣と出会うことができてほんとに幸せ者だ。こんな俺と結婚してくれたことや麻樹を授かったことに感謝して残りの半年、恩返しのつもりで麻衣を支えていこう。そんなことを考えながら家路についた。つづくTwitterでは妄想ツイートしたり、告知したりしてます。たまにCASもやりますTwitterアカウント→ https://twitter.com/f_rock_sol?s=09