一台解約してきました。オレ名義で契約していたウチのオヤジの分です。
何と冷たい倅だと思うかも知れませんが、一昨年の暮れにオヤジはポックリ亡くなりまして。そのまま一年間以上使う人がいないまま放置されていたのです。
何だかねぇ。寂しいものですよ。そのまま放置してても何の意味もないのは分かるけどね。ひょっとしたらこのケータイであの世からまた電話してくるかも知れない。まぁかかってきたらそれはそれでコワイものですが。
欲しい欲しいとウルサイので、数年前にオフクロのと一緒に買ってきたものです。表には出さなかったけど、内心喜んでたみたいね。
事業に失敗して、他の息子達とは疎遠になり、夜逃げ同然でこっちに引っ越して来たのが、もう10年以上前。
昔の知り合いとか誰もいない土地に来て、細々と年金暮しをする身。誰と話をするわけでもないのに「今時ケータイくらい無いと!」とさかんに言ってた事を思い出します。
たいていはオフクロかオレとの連絡にしか使わなかったものですが、発信履歴を見ると見慣れない人の名前が平仮名であります。
「それはヤクルトの配達の人の番号。たまに頼むから登録してくれ、ってお父さんから言われたの」。そういや一時期ウチにヤクルトがわんさとあった時があったっけ。
寂しかったんだね、きっと。オレもオフクロも日中は家に居ないし。ヤクルトのオバチャンくらいしか話し相手も居なかったんだね。そんな微かな接点に縋りたいほど寂しかったんだね。
最後の方はだんだん痴呆の症状も出てきて、変わった行動が目立つようにもなりました。思うようにならないカラダを抱えて、ひとりで毎日孤独を噛み締めていたんだと思う。
晩年はゆっくり話したことはあまり無かったけど、死ぬ前の晩に珍しく一緒にメシを食べました。年に数回あるかないかのことです。きっと神様が最期の晩餐の機会を与えてくれたのでしょう。
DoCoMoは解約したけど、まぁ今のオヤジならそんなの使わんでも、何かのチャネルで天国からそのうち連絡してくれることでしょう。
「オヤジ、用があったらいつでも連絡しなよ。待ってるから。リュウ」