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「坊ちゃん」夏目漱石(新潮文庫)

夏目 漱石
坊っちゃん

夏目漱石といえば「坊っちゃん」か「我輩は猫である」を思い浮かべてしまうのですが、ちょっと四国に興味があったため四国の中学校を舞台とした「坊っちゃん」を今さらながら手に取ってみました。

基本的に僕はシューゲイザー世代なので、新しいものがかっこいいというなんとも浅はかなポリシーのもと、いわゆる文豪が書き記してきた古典的文学をおざなりにしてきました。しかし僕も大人になり、「ストーンズの初期はなんてかっこいいんだろう、ジャケ写も含めて」と思うようになり数年経った今、「坊っちゃん」なのです。(関係ないですが、マイクロソフトのゲーム機のCMにストーンズの「Jumpin'Jack Flash」が使われているのですが、なんか消費されているようで嫌です)

なんというのでしょう、普段親しんでいる現在進行形の小説とは異質な落ち着きのなさみたいなものがあって非常に音楽的だなあと感じたのでした。漱石の気分のノリがそのまま文章に反映されているというか、一気に駆け抜けるような瞬間がところどころあるのです。

そしてさんざん嫌がらせをしてきた相手についに仕返しをするシーンのあまりにも力の抜けた感じも「スカされた感」を読者に与え、簡単に爽快感を味あわせないところなんかも只者ではない風格を感じさせます。

上の写真は集英社文庫版の表紙絵なのですが、新潮文庫版の表紙絵は安野光雅が手がけており、こちらのほうが個人的には秀逸に思えます。

「天国までの百マイル」浅田次郎(朝日文庫)

浅田 次郎
天国までの百マイル

事業に失敗し、さらに離婚に追い込まれ、まさに人生の底辺を這いつくばう男が、病気に伏せる母を100マイル離れた病院にバンで運ぶというストーリーなのですが、というかこういう風に簡単に書いてしまうと訳が分かりませんね。

細かい解説をここでするよりもまず、ぜひこの本を手に取って読んでいただきたい。

小説を読んで涙が溢れるなんて、想像もしていませんでした。それほどまでに心のやらかいとこを直撃したのです。

陳腐な僕の解説よりもぜひ実物を!

ちなみにこの小説は時任三郎を主人公役にして映画化されたのですが、これがひどかった。2時間に収めるためにストーリーをはしょりすぎてなんとも薄っぺらい映画になってしまったのです。小説では重要な役割を担う男を寺島進が演じていたのですが、あまりにも説明を省きすぎていたために、なんで出てきたのか、小説を読んでいない人には全く分からないという体たらく。エンディングテーマはF-BLOOD(フミヤと弟のユニット)が手がけていて、これまた小説の世界観と全くそぐわないちぐはぐっぷりで、総合してこの映画は全くのダメフィルムに成り下がってしまったのでした。

映画版は観ないでほしいなあ。

「こさめちゃん」小田扉(講談社)

著者: 小田 扉
タイトル: こさめちゃん―小田扉作品集

 小田扉は現在ビッグコミックスピリッツで「団地ともお」という漫画を連載している作家なのですが、少し前までは知る人ぞ知るといった感じでマイナー誌や同人誌に作品を発表していました。

 このノスタルジックでもある独特の世界観は、何度も読み返したくなるというか、味わい深い魅力があります。ギャグも絶妙なゆるさを常にキープしていて、ワン・アンド・オンリーさを感じさせます。

 本書は作品集なのですが、その中の「話田家」というシリーズ作品が非常に心にグッと来ます。父親が別の女の所に行ってしまったために母親が自殺、残された長男、長女、次男が3人で生きていくというストーリーなのです。こういう風に書いてしまうとなにやら悲しい話のようですが、実はそうではなく、先に挙げたのはあくまで物語の背景でしかなく、兄弟3人の日常が描かれる知られざる大傑作なのです!

 これはぜひ多くの人に読んでもらいたいなあ。

「アーキトラベル-建築をめぐる旅」中谷俊治(TOTO出版)

著者: 中谷 俊治
タイトル: アーキトラベル―建築をめぐる旅

 10年間勤めていた原広司設計事務所を辞めて、2年間世界の建築を見て巡った旅の記録です。

 エジプト、ギリシャ、イタリア、トルコ、スペイン・・・とヨーロッパを中心に巡る著者は贅沢過ぎだなあ、と思ったりするのですが、仕事を辞めて独立する準備のための旅でもあるので、お気楽ムードが感じられない硬派な紀行文となっています。

 この本は全てのテキストページの上にパノラマタイプの写真が掲載されており、さらにときおり、トレーシングペーパーのような少し透ける素材の紙にカラーで旅行の際に使用したと思しき地図やチケットのコラージュが印刷してあり、アートブックとしても楽しめるようになっています。

「1950s」The Hulton Getty Picture Collection

著者: Nick Yapp, Hulton Getty Picture Collection
タイトル: 1950s: The Hulton Getty Picture Collection (Decades of the 20th Century Series)

 2年ほど前に渋谷のタワーブックスで見つけた洋書の写真集です。友達に配るためのmix CDのジャケットを作るときにこの中の写真をスキャンして使ったり、Tシャツのデザインのために写真を見ながらドローイングしたりと、デザインのおかずに役立つ一冊です。

 ジャンヌ・モローの隣でトランペットを吹くマイルス・デイヴィス、気難しい顔をしたフランスの天才建築家ル・コルビュジェ、クォーリーメン時代のジョン・レノン等、かなり心を刺激する写真多数でこれは買いだと思います。

 

 

「餓狼伝」作・夢枕獏 画・板垣恵介(講談社)

著者: 夢枕 獏, 板垣 恵介
タイトル: 餓狼伝 16 (16)

 昨日格闘技イベントPRIDEの中継を観ていたのですが、格闘技の凄惨な面がかなりクローズアップされてしまった大会だと思います。顕著だったのは桜庭和志で、両目の上が腫れ上がり、まるで別人のような顔になっていました。

 ボクシングの試合中に命を落とすボクサーを今でも新聞やニュースで目にすることがあります。総合格闘技の世界ではボクシングよりはるかに薄いグローブで殴り、思い切り頭を蹴ったりすることは当たり前になっているのですが、今まで死人が出なかったのはただの幸運なのじゃないでしょうか?

 ただ選手たちは了解の上でリングに上がっているので、外野がとやかく言う筋ではないのですが、もっと迅速かつ的確なレフェリングを期待したいと思います。

 殺人ショーが観たいわけではないのですから。


 とはいえ、漫画の世界では全開でぶちかましてもらいたいものです。ということで、夢枕の原作を破壊しつつ続く漫画版「餓狼伝」は痛快です。

「NARA NOTE」奈良美智(筑摩書房)

著者: 奈良 美智
タイトル: NARA NOTE

 奈良美智が99年から00年までに書き綴った日記と描き綴ったドローイングをまとめたものです。

 商業主義に中指を立てて、イースタンユースやNOFXのレコードを爆音で浴びながら作品を製作する奈良の姿に共感!

 いいものが描けるまで、描けばいいんです!

 NEVER FORGET YOUR BEGINNER'S SPIRIT!

「狂気の左サイドバック」一志治夫(新潮文庫)

著者: 一志 治夫
タイトル: 狂気の左サイドバック

 コンフェデレーションズカップにおいて、日本は本気のブラジルに2度も追いつき引き分けるというかなり魅力的な試合をやってのけました。

 アトランタオリンピックにおける「マイアミの奇跡」のような棚からぼた餅のような戦い方ではなく、真っ向から点を取りにいった明らかにモチベーションの違う戦いっぷりに心を奪われました。

 こういう試合が観たかった!


 ワールドカップ未経験の暗黒時代は永く続き、しかしその扉に手がかかった瞬間がありました。その扉を力ずくでも開こうと、左足にボルトを打ち込み、魂を削って、左サイドを駆け上がり、クロスボールを上げ続けていた男がいました。

 その男は都並敏史という左サイドバックの選手でした。

 結局、彼はアメリカ大会の最終予選の舞台に立つことはありませんでしたが、その勝利にかける執念はまさに「狂気」でした。

 後に扉は次のフランス大会でついに開かれるのですが、その礎を築いたのは都並たちのような男たちの代表への誇りだったと思います。

「ヤクザに学ぶ交渉術」山平重樹(幻冬舎アウトロー文庫)

著者: 山平 重樹
タイトル: ヤクザに学ぶ交渉術

 仕事上、客からクレームを受ける方も多いと思います。いくら「お客様は神様です」とはいえ、理不尽な言いがかりに黙っていてはストレスを溜め込んでしまうことでしょう。

 いわゆる交渉のテクニックにはいろいろな種類があるのですが、ハラを括って話をすることがいちばん重要なことのようです。そうすれば落ち着いて話を進められ、譲れない部分を貫けるはず。

 なんの不備もないのに頭を下げるのは、その場は丸く収まるかもしれませんが、必ずしも正しいことではないですものね。

 本書はいわゆる交渉術の指南書なのですが、クレーム対応にも活用できそうなので紹介しておく次第です。

「まんが道」藤子不二雄A(中央公論新社)

著者: 藤子 不二雄A
タイトル: まんが道 (9)

 僕は小学校の頃にこの本を読んで、将来は漫画家になって、トキワ荘に住んで、週間少年ジャンプに連載する!と心に誓ったのでした。

 小学生の僕を一発で漫画家になる決意をさせるほどに、この作品には漫画に対する半端ではない熱量が感じられます。藤子不二雄Aの視点から語られる自伝的な作品なのですが、寝る間を惜しんで漫画のことを考え、そして描く!執念ともいえるこの情熱は藤子不二雄の表現者としての性(さが)だったのでしょう。

 まだコピー機のない時代に、手塚治虫の「新宝島」を全ページ模写するエピソードは戦慄もの。

 上京して売れっ子漫画家となり、何本もの連載をかかえるようになってから、夏休み気分で里帰りをしたために製作の進行スケジュールが狂い、結局すべての連載を落としてしまい、ほとんどの出版社から干されてしまうというシリアスな実話もリアルに描かれています。

 各出版社から催促の電報が連日実家に届けられる状況で、尋常ならざる焦燥にかられながら苦悩する様は、かなり痛々しいものがありました。それが「オクルニオヨバズ ヨソヘタノンダ」という一通の電報を最後に何も届かなくなった瞬間の絶望感たるや!

 漫画家を辞めるつもりで、身辺整理のために再度上京する彼らだったのですが、盟友であり漫画家の先輩でもある寺田ヒロオに「君たちの漫画に賭ける情熱はそんなものだったのか?!」と問い質され、再びまんが道を歩き始める姿は涙なくしては見れません。

 

 さて、僕は結局、トキワ荘にも住まず、週間少年ジャンプにも連載せず、その前に漫画家にもならず、普通のサラリーマンになってしまったのでした。

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