前回に戦国時代漫画として「センゴク」が一番(個人的に)と挙げましたが、この作品を失念しておりました。

私が戦国武将たちを知るきっかけになった漫画である「花の慶次」。戦国時代の武将であり傾奇者であり文化人でもあった前田慶次郎利益を主人公とした戦国時代漫画。舞台は秀吉が日本統一目前とした場面から関ケ原までが描かれております。

当時は週間少年ジャンプでこの濃い漫画が連載しておりました。なんといっても作画は「北斗の拳」で有名な原哲夫先生です。原先生の作画は私史上最高の作画です。この作画からの主人公である前田慶次が振るう槍はまるでラオウの剛拳です。戦闘描写もまた史上最高作画だと思っています。

巨大な松風(馬)にのって槍の一振りで10人ほどぶった切る描写は慶次の圧倒的強さを余すことなく表現しています。

そんな「花の慶次」ですが、連載は30年くらい前の作品。今は知る人も少ないかと思いきやパチンコになっているようで。それでなんとなく知っているという人は少なくないかもしれません。

さて主人公の前田慶次とは、いったい何者か。織田信長配下の名将の中でも5本の指に入る滝川一益(地味なのであまり知られていないが明智や羽柴の次点くらいの将)の一族であり後の五大名の前田利家の甥にあたる人物です。長男の養子とはいえ前田家を継ぐはずの慶次ですが、信長の鶴の一声で前田家は利家が継ぐことになり、その微妙な関係が作品の初期に描かれています。(原作の小説があり、その作品の解釈などあります)

慶次は義父の前田利久が世を去ることで加賀から京都に旅立ち、上杉家と関わる事で物語が厚みを増して一気に面白くなりましたね。直江兼続などはこの作品で知名度が一気に上がったと思いますし、真田幸村を私が知ったのもこの作品です。



直江、真田以外にも服部半蔵、風魔の小太郎、伊達政宗など原先生が描くキャラは皆格好いい!特に私は風魔の小太郎が好きでしたね。ラストのシーンも含めて。

↓は回想シーンの織田信長、これよりカッコいい信長は存在するのでしょうか。信長に思いを馳せる佐々成政や秀吉も熱かったです



そしてパチンコでも有名な百万石の酒のシーン。人気キャラ勢揃いの中のシーンでした。少年時代にこの中で唯一のモブだと思っていたキャラが一人いましたが、大人になって読み返すと、なんと大阪の陣で有名な後藤又兵衛でした。ジャンプでターちゃんと慶次だけ読んでいた司馬遼太郎好きの父親は分かっていたのであろうと思います。




物語の後半の関ケ原では上杉家に属していたので最上との合戦でした。「石田三成様、御敗北」の西軍敗北の報で形成が逆転、ここからのシーンが漫画でも史実でも慶次の最高潮だったと思います。この完璧な作画での合戦をぜひご堪能ください。

ちなみに私は前田慶次記念館で上杉と最上の合戦屏風を拝見したことがございます。司馬遼太郎の小説から一気に歴史に興味を持って色んな小説を読み漁った時期でした。コンビニで売っていた歴史街道という雑誌の初期の初期くらいに前田慶次が表紙だったので買った記憶があります。

衝撃だったのは原先生のインタビューです。本来は「花の慶次郎」だったのが「花の慶次」の方が語呂がいいという理由で慶次になったとのこと。(私の記憶ではそう書かれていたと思います)

原先生のおかげであらゆる媒体が前田慶次郎(いわゆる羽柴藤吉郎というような呼び名)でも前田利益(こっちは羽柴秀吉みたいな感じ)でもなく前田慶次という名前が定着することになりました。NHKは流石に前田慶次郎でしたが。

別の作画の方が描かれた続編もありますが、やはり原先生の慶次が原点にして至高です。読んだ事のない方にはぜひ原先生の戦国漫画を体験していただきたいですね。

ちなみにYouTubeでボイスを付けて漫画ドラマがアップされているようです。公式なようですので、まずはそちらで見ていただきたく候