実は、作家になりたいと思っていたことがありました。今の文章力を考えると本当に笑ってしまいますが。

物心ついたころから、新聞と共に郵便受けに入ってくる広告ちらしの裏に小説や詩を書いていました。

内容は冒険物や動物が主人公のものでしたが、書いたものをごく稀に親が面白いと言ってくれたのがとても嬉しかったことが記憶に残っています。

そんな自分に祖父はいつも色んな本を買ってくれました。祖父はもともと軍人でしたが、小説も書く人でした。当時は子供向けにやさしく書かれた偉人の伝記や海外の小説を定期的に買って送ってくれていました。お気に入りだったのは、デュマの「モンテクリスト伯」(当時は巌窟王というタイトル)、ユゴーの「レ・ミゼラブル」(当時はああ、無情というタイトル)でした。ヴェルヌの「十五少年漂流記」もお気に入りでしたが、よく考えてみるとこれらってフランス文学ですね。

小学生の頃、一時的に親の仕事の関係で海外に住むことになりましたが、その時は日本や世界の歴史について漫画にして分かりやすく説明してくれる本を送ってくれていました。そこで歴史の面白さに触れました。

中学校の時は文芸部に所属し(当時、男で文化部って珍しい存在)、学校の図書室の本を読み漁っていました。その頃は太宰治などの日本文学や、空襲や原爆、アウシュビッツなどの戦争の実体験をもとにした本を読むことが多かったです。この時期に戦争で人が殺し合う悲惨さを学びました。

やがて大学受験を控えた高校正の時代は、本というよりは参考書などを読む機会のほうが増え、そして大学入学後はバイトや友人関係をつうじて一気に世界が広がり、じっと本を読んでいる時間もなくなりました。そのまま、社会人生活に突入、仕事を辞めて2年間大学院に通っていた時期は割と読む時間もあったはずですが、その頃は修士論文を書くため、英語の論文を読み漁っていました。

社会人も後半になれば読むものといえば、仕事関係の文書であったり、たまに自己啓発本であったりが中心で、小説を読むことなどほとんどなくなりました。そもそも本を買って読むこと自体が稀になってしまっていました。

 

ある日突然、その状況に危機感を抱き、2022年から一か月に一冊は読むというルールを決めて実践しています。もちろん忙しくて一冊も読めない月もあれば、気分が乗って2,3冊一気に読んでしまうこともあります。とにかく1年に12冊読めばいい、という柔軟なルールにしています。その結果を手元に記録しています。

 

2022年は14冊で目標達成、しかし、2023年は9冊で未達成、2年で24冊読んでいるはずのところ、そのラインも下回っています。そして2024年、今のところ5か月で8冊を読了、いい感じです。

 

ただ、過去に読んだ本を振り返ると、その内容がまるで思い出せなかったりして、本当に読書したことが自分の身になったのだろうかという点にも気が付かされます。タイトルが面白いと思った本の内容が実はつまらなかったということもあります。限られた目標だからこそもっと厳選して読むべきなのでしょうが、そもそも読んでみたいという本も少ないので、結果、あまり書かれている内容が記憶に残らないのでしょう。いろんな本を読んでいるうちに、次はこの本も読んでみたいという欲求が起こってくるだろう、と気長に読み続けることにしています。

 

ただどこかの段階で今まで読んだ本の内容を再度、簡単に読み直してみて自分の生活や知識に貢献度が高かった本を洗い出してみようかとも思っています。

 

それにしても、人生50にして、読むことの大切さがいまだに体に染みついているには、祖父のおかげです。もうすでに他界してしまっていますし、家族のごたごたもあって祖父に生前ありがとう、ということもなく、今に至ってしまっています。いつかまた祖父のお墓を訪ね、感謝の気持ちを表したいとも思っています。