短編小説 【夢現】
【夢現】
【夢七つ】
凛とした夜、月だけが辺りを照らす。星は両手で数えるほどしかない不思議な空。
裕美は夕御飯を調達するために、釣り糸を川へ投げ込み、糸を巻いては投げ、巻いては投げてを繰り返していた。けれど裕美はそんな単純なことを苦しいとは思わなかった。なぜかというと、
「うわぁ、今日は大量だよ! 釣り糸を投げるたびに魚が釣れるなんてありえないっしょ」
今日のあたしは絶好調の絶対無敵。誰が来ようとも今日のあたしに釣りで勝つことはできないのよ。
ありえない釣果にすっかり上機嫌な裕美は、当初三匹釣るつもりだったが、今ではバケツ一杯、数えるのが苦労するほどの魚を釣り上げていた。
「うっ! これは大物だよ!」
ぐっとしなる竿、確かな手応え。裕美は一瞬で今日一番の大物と確信した。
この引きは池の主かもしれない。さすがあたし、本日絶好調!
今日の勢いと共に引き上げた竿には、なんと魚ではなく、
「なんだこれ? ライオンの置物?」
それは鉄製のライオンの置物で額には『Z』と言う文字が刻まれていた。裕美はどこのメーカーのものか頭を巡らせたが、そんなマークは見たことがないという結論をすぐに導き、ついでだから、その置物を魚が入ったバケツに入れた。
せっかくいい調子で釣りをしていたのに、大物と思っていたらあんな置物が釣れるとさなると、さすがにだれてしまったらしく、店舗よく片付けを済まし、その場を後にした。
しばらく山道を歩き、家へと続く一本道にたどり着いたころ、突然後ろの方から声が聞こえた。裕美は気になり、耳を澄ますが遠すぎてよく聞こえない。
このまま立ち止まっているとお腹と背中がくっつきそうになったので、声のたよりを探すことを諦め、裕美は足を前に踏み出した。すると、足下の茂みが静かに揺れ、木々の雑音とともに老人が飛び出してきて、裕美の前でいきなり土下座をした。それは深く深かった。
「お願いだ。そのライオンをわしに譲ってくれ、頼むこの通りじゃ」
よく見ると土下座をしているのは、この辺りで一番の金持ちの老人だった。
いつもは偉そうに命令したり、見下すそんな老人が、凡人のあたしに土下座までするのだから、このライオンの置物はすごく貴重な物なんだろう。よし、これは何かのチャンスかもしれない。
「いいよ、これあげる」
裕美は老人を見下ろし、置物を手に取った。
「ほんとうか」
「ばか、誰が土下座やめていいっていったんだよ、そのままでいろよ。じゃないとこのライオンあげないよ」
「あぁ、すみません、裕美さんのいう通りにしますので」
裕美は最高に幸せだった。生きていてこれほど気持ちいいことがあっただろうか、なんて爽快な気分。いつもは名前なんて呼ばず身分で呼ぶくせに、それがこの態度。裕美は大釣果のときよりも倍くらいの幸せをかみしめていた。
「そんなことをしてもあげないよ」
裕美はそういうと家に向かって一直線に走り出した。
「ちょっと待ってくれ、お願いじゃ」
そう叫ぶ老人を無視して、裕美は舌を出し、
「あんたみたいな人にあげるわけないでしょ。ばーか」
言いたいことをすべて言い切り、胸のもやもやがすっかり晴れた裕美は、疲労困憊しながら追ってくる老人の姿を想像し、さらに上機嫌になった。
しかし、裕美の予想とは裏腹にその老人はありえない速度で走り、裕美が釣ったライオンの置物に手をかけた。
「お前の傲慢さにはほとほとあきれるわい」
裕美は驚きのあまり声が出なかった。夢と現実が入れ違ったようにしか思えない状況に、罵倒する気力をすべて吸い取られたように。
その老人は裕美が釣り上げたライオンの置物を引ったくり、そのまま夜の町に消えていった。
「返せー」
「何が帰せだ馬鹿やろう! 授業中に寝る奴なんてとっとと帰っちまえ」
その声で裕美はさっきのことが夢だと気づいた。
そうだった、今は5時間目の国語の授業だった。しかも先生すごく怒ってるよ、謝ろうかな? どうしよう。
なんて考えている間に裕美は廊下に放り出された。
裕美は夢を見るのが好きな少女だ。現実の夢ではなく、睡眠時に見る夢の方だ。何だかよくわからない矛盾した出来事でファンタジックな幻想を体験できることが何よりも楽しいらしい。
それにしてもどうかしてるよ、授業中にレム睡眠に陥ってしまうなんて、あたしらしいと言えばあたしらしいけれど。そういえば最近夢を見る日が多いなぁ。
裕美は昨日も一昨日も夢を見た、恐らく三日連続だろう。しかし見たと言うことを覚えているけれど、その内容までは覚えてはいない。普通ならその内容を思い出せない自分に苛立つだろうけれど、裕美はそんなことがなかった。また夢を見れば昨日見た夢も一昨日見た夢も思い出せる、何となくそんな気がしたから。それは夢よりもずっと不思議な気分だった。
そして裕美の予感は的中した。その日の夜、またあの星がごく少しの世界へ舞い降りた。
裕美は早速思い出すことにした、昨日の夢と一昨日見た夢を。するとやっぱりすんなりと思い出せた、普通ならそれは不思議なことだろうけど、裕美にとっては空気中に酸素が含まれていることと同じくらい当たり前だと思っていたので、安心することも喜ぶこともなかった。
一昨日見た夢はずぼらで優雅な夢だった。何もせずに料理が運ばれてきたり、お風呂が勝手に目の前に現れたり、欲しい物を願うと手に取れると言う、まさしく典型的で堕落しきった夢だった。
昨日はユニコーンの音楽とともに現れる男が、いつも金を借りにきては踏み倒すと言う最悪な夢で、確かその男を怒鳴り散らしたところで夢が終わった気がする。
そして今日はどんな夢を見れるのだろうと心待ちにしていると、香ばしい匂いが鼻を通った。裕美はそのまま鼻に任せ匂いをたどると、そこはTVで見たこともある有名とんかつ屋だった。
早速のれんをくぐると、そこには脂身がちょうどいい具合に乗った豚肉を切る店員姿が。たまらず裕美はとんかつ定食を一人前注文することにした。
「おじさん、一番おいしいとんかつ1つ!」
あいよ! と愛想のいい返事が返ってくると裕美はさらに上機嫌になり、箸を両手で持ち鼻にかけた。
とんかつが揚がるまでの間、暇つぶしをしようと店内を見渡すが、そこには娯楽と言う言葉がつく物は何一つなかった。あるのは机と椅子、それと箸とお手拭きだけという最小限の物しかおいていないようだ。
しかたない、数十分の辛抱だと思い、お手拭きを取ると、カランという綺麗で高い音が響いた。
「サイコロ?」
サイコロは裕美の目の前で2と5の数字を向けてとまった。
なんでサイコロしか置いていないのだろうと少し不安に思ったけれど、そこは店長のこだわりなのかもしれないと思い、店員に問うことはせず、裕美はサイコロを転がしながら豚がパン粉で揚がるのを待った。
そろそろサイコロ遊びにも飽きた頃、裕美の前にからっと揚がったとんかつが黄金色の衣に身を包み油のいい匂いをさせた。
裕美はいただきますを言うよりも先にとんかつを口にいれ、さくっとした衣の感触とその肉汁に絡み付くソースを口いっぱいに広げ、空腹を満たした。
「これ美味しいよ! こんな美味しいとんかつ食べたの初めて!」
裕美はそのとんかつがあまりにも美味しかったので、口の中をもごもごさせながら店員に言った。
「それはうれしいことでござんす。もしよけりゃあドンドン揚げますよ! その気持ちに免じてお代はその定食代のみでよろしいので」
「本当に!? じゃあお願いします、マジでうれしいよあんがと!」
思ってもいない幸福な出来事がさらに食を進ませ、あっという間にとんかつを一枚平らげた。すると今度はテンポよく二枚目、また食べ終えると三枚目と運ばれてきて、裕美の箸は止まることがなかった。不思議と満腹感はない。
「あんまり食べると嬢ちゃんのお腹破裂しちゃうよ」
「ははっ、面白いこと言うねおじさん。そんなわけないじゃないかぁ」
と言いつつも、自分の腹に手を当ててみて少し不安になったけれど、本当にそんなことがある訳ないので、さらに裕美は腹を膨らましていった。
机の上がとんかつをのせた皿でいっぱいになったころ、さすがの裕美も自分の明日からの体重が気になり箸を止めた。いつもより十倍近く腹が膨れている。
「ありがとう! すんごくおいしかったんだから。またくるね」
そういってのれんに手をかけると、店員が裕美の手を引いた。
裕美は食べ過ぎたからやっぱり全額払えと言われると思い少し不安になった、そんなお金を持っている訳がない。裕美の計算では軽く一万円を超えていつ。
すると店員は、
「いやお金は大丈夫、ただこれさえ返してくれればね」そう言うと引き出しから七センチ程の大きな針を右手で持ち、裕美の大きくふくれたお腹に突き刺した。
するとお腹が破裂し、パーンと風船が割れたような音が店内に響き豚肉をまき散らした。
裕美は何がおこったかわからず、お腹に手を当てることも忘れ、ただ空中を舞う豚肉を凝視した。
「暴食の先に何があるのかね? まいどありー」
「と、とんかつー」
「何だよ、うっせぇな、起きて第一声がとんかつなんてどれだけ食い意地はるんだよ。それに朝からとんかつなんてどんな胃袋してやがるんだ」
その声で、やっと裕美は布団の上だと気づいた。
「あたしなんか言った? おにい」
「とんかつって叫んだ。うっさい」
もちろん先ほどの夢のことなど裕美は覚えてもいなかったので、その言葉を不思議に思いながら朝ご飯の用意された台所に向かった。
どうやらまた夢を見たようだ、それだけはわかる。でも内容はさっぱり。こんなのが四日も続くなんてあたしはどうかしている。
夢を見ることが好きな裕美も、さすがに少しずつ恐怖を覚えてきた。
そんな裕美の気持ちを知ってか知らずか、その次の日も夢を見た。
その夢はすごく現実的だった。
おにいのお小遣いが裕美よりも三千円も多かったので、お母さんに文句を言いにいくと言う夢だった。確かその理由は、おにいが野球部でレフトを守っていてレギュラーだから、という帰宅部の裕美には反論できない理由だったので、口答えができず悔しい思いをした。
もちろんその夢も、夢から覚めると思い出すことはできなかった。
そしてまた夢を見た。
その夢で裕美はなぜだかある男に凄まじいまでの恋心を抱いていた。
「何であたしを好いてくれないの? あたしはこんなにもあなたに尽くしてるんだよ」
あたしはどれほどこの男のために色々としてきたのだろう、ご飯の支度はもちろん、掃除もしたし、生活費まで渡して、さらにプレゼントまで送っていたのに、不思議でならない。会話だって弾むし、けんかなんてほとんどしないのに。どうして。
それは裕美の声にならない叫びだった。
しかし男はそれを知ってか、裕美と友達以上の関係を持つことはなかった。
「うるさい、お前は蠍座の女だから良いんだよ。ただ働いてりゃいいんだ」
そう言うと、男は引き出しから、裕美の貯金を取り出した。
「そのお金どうするの?」
「あ!? 今からちょっといってくるさ」
そう言って、酒を飲む仕草をしながら、男は家を出て行った。
裕美は男を引き止めることをせず、そのお金さえ渡していれば家にいてくれるのだからそれでいい。本気でそう思っていた。
しかし夜が更けても男は帰ってくることはなかった。裕美は心配になり、男を捜しに家を出た。
嫌な予感がしたのだ、もしかすると、他の女と過ごしているのかもしれないという、最悪の出来事が起こる気が。
十分程走り回って疲れ果てた裕美は、ふと目についた公園で休憩することにした。ベンチに座り息を整えようと思い、辺りを見渡すと、なんと偶然あの男の姿が瞳に映った。
あまりのうれしさに裕美は男の方へ駆け出したが、男の腕には最悪の出来事の象徴である女性の腕が絡み付いていた。
どうして? こんなに愛しているの、こんなに尽くしているの、思っているのに、あなたはあたしを見てくれないの? いつになればこの螺旋から逃れられるのだろう、もしかすると一生届かないのかもしれない、もしそうなら、そうだとするならば……。
「てめぇ何しやがる」
その声に裕美は気を持ち直し、男を見た。
腹部から血が溢れ出ていた。
裕美は自分の手に違和感を感じ、ふと目を落とした、そこには血に濡れた包丁と赤く染まった自分の手が映った。
男は裕美を睨みつけ、呪いを告げるようにつぶやいた。
「色欲は心を狂わせる……か」
「あたしは悪くないんだから!」
「ワン!」
そう鳴きついて裕美の頬を柴犬が舐めた。
「あれ? なんであたしの部屋にいるのナイン? あたし読んだっけ?」
「ワンワン」
機嫌良くシッポを左右に降るナインの様子を見る限り、あたしが名前を呼んだか散歩の時間かのどちらかだ。空を見るとまだ明るさを取り戻し始めた色をしている。この時間だとまだ散歩の時間ではないし、とすると寝言でこの子を呼んだのかな? それにしても今日は特に寝心地が悪かった気がする。何だかもう嫌だよ。
立て続け見る悪夢に裕美は心底疲れ果てていた。もちろん夢の内容までは覚えていないけれど、喜か哀くらいの判別はついた。
もう怖いよ。もう今日は寝ないでいよう。こんな気分になるくらいなら寝ない方がましだ。夢なんてなくなっちゃえば良いんだよ。
そして太陽は落ち、時計が三を指す頃、裕美は案の定寝息を立てていた。恐怖感も睡眠欲には勝てなかったようだ。
その夢はいつもの月が照らし、星の少ない世界ではなく、真っ赤な、血よりも紅い色で包まれていた。
空には何もなく、ただ紅が広がるだけ。もちろん家やら電柱などある訳がない。
裕美は不安になり、いてもたってもいられずどこに行く当てもないのに駆け出した。遠くにいけば誰かに会えるかもしれない、何か建物があるのかもしれない。
そんな裕美の期待を裏切るかのようにただ永遠と紅の世界は続いた。
どうしてこんなに空が紅いの? みんなは消えてしまったし、もしかしてここはあたしの住む世界ではなく異次元ではないだろうか、きっとそうだ。あたしはもしかすると四次元に迷い込んだのかもしれない。
裕美はこのとき普通の考えができなくなっていた、何時間も走り回っても同じ景色という現実はそれほど心を傷つけた。異常なまでの心拍数、滴る汗、紅くともる体。この世界では何もないのかもしれない、そう絶望しそうなときだった。
「チャリン、チャチャ」とリズムもよく響き渡る鈴の音がした。
音の大きさからさほど遠くない。耳を澄まして位置を確かめると、音は少しずつ小さくなっていく、それはかすかに動いていた。このままだと見失ってしまうかもしれない、このチャンスを逃すともう二度と巡り会えない気がして、裕美は疲れた体を必死に動かし、ただ鈴の音のする方へ進んだ。
しかし一向にその音の場所がつかめない。少しずつ音は近くはなってきているのだけれど、人の気配が感じられない。もしかして心霊現象かもしれないと不安になったけれど、裕美はとにかく何かを見つけたかった、それは例え幽霊であっても、自販機でも、何でもよかった。ただ人とのつながりにある物に触れたかった。
その鈴の音を追ってついに一時間が経過した。その音は頭を響かせるくらいの大音量でこの辺りになっていた、それでも人を、鈴を見つけられない。
これだけ音が近いのに何とも出くわせないとすれば、考えられる可能性はたった一つしかないだろう、この音はあたしの寂しさが生み出したのかもしれない。だから音の主を確認できないのだ。
そう決め込んだ裕美は座り込み、何もやる気がなくなりただ溜め息を吐き続けた。
そろそろこの場所から離れようと思い、裕美が手を地面につけると、何か違和感を感じた。
「あれ? 何でこんなところにタバコがあるんだろう?」
もしかすると人がこの近くにいるのかもしれない、という期待に輝かせた目を上げると、驚いたことにそこはあの忌々しい紅の世界ではなかった。
真っ白な、何にも汚されていないような、それほど美しく色のない世界だった。
裕美はただ感嘆しその景色を眺めた。どこからどう見ても白い世界が続いている、不思議だけどすごく心地いい、もしかすると天国なのかもしれない。そう思う程、その世界は美しく、気分のいいものだった。
「やぁ、どうもいらっしゃい」
裕美は突然、後ろから聞こえる声に驚きビクンと体を動かせたが、すぐにその気持ちは喜びへと方向転換された。
やっとこれで人と出会える、何時間ぶりだろう。あたしはこのときをどれほど待っただろう、きっとそれは閏年よりも長いだろう。
振り返るとそこには思ってもいない人、いや動物が佇んでいた。
「どうして狐が立ってるの?」
そこには淡い茶色のジャケットを羽織った狐が帽子を深くかぶり、じっくりと裕美を眺めていた。どっしりとした立ち振り舞は、何よりも高貴で美しいように見えた。
そしてその狐はポケットからタバコを取り出し火をつけた。
裕美は不安を胸にためきれなくなり口を開いた。
「ここはどこなの?」
狐はタバコを口元から離し、大きく煙を吐き出した。
「ここは先ほど君のいた紅の世界の末端です。まだ塗られていない世界」
「まだ塗られていない世界?」
「そう、今からあなたを塗料として使わせていただきます。光栄なことでしょう?」
そう言って、狐は大きなはさみを取り出した。
裕美は悟る、塗料とは自分の血と肉だと言うことに。
「いや、やめてよ」逃げ出そうにも足が震えていうことが聞かず、ただ両手を振り回すことしかできない。
「今日は何日目だと思います?」
「どういう意味? なんなの?」
「わからないようですね、今日はあなたがこの世界を覗いてから七日目なのですよ」
この世界と言う言葉で裕美はあることに気がついた。確か奇怪な夢を見始めたのはその辺りだったような気がする。
「今気づいたようですがもう遅いです」そう言って狐ははさみを閉じたり開いたりし、その音が世界に響く。
「どうしてあたしが殺されなきゃだめなの?」
「簡単なことです、思い返して見なさい、この七日間であなたは七つの罪深きことを起こしてしまいました。しかしそれが人間と言うもの、何も悲観なさることはないですよ。ちなみにあなたで823,543人目ですので」
「本当に殺しちゃうの?」
「ええ、もちろん。これからあなたのお腹を十時に切り、腸を垂らし、その光景をしばし楽しんだ後、綺麗に臓器をくり抜き、血をまき散らし、この世界の一つとなっていただきましょう」
「夢でしょ? ねぇ、だから殺したって意味ないんでしょ」
「夢であることには間違いないですが、このハサミであなたを切り刻むとこの覚める保証はないでしょう」
「いやぁぁぁあ」
裕美は最後まで叫ぶ間も与えられず、ハサミで腹を十時に切られ気を失った。
「ふっ、また会うことになるでしょう、人間よ、次の人間は罪深くなければ良いのですが、まぁそれは七日後わかることですね」
狐はそうつぶやき、血にまみれた裕美の死体を眺めていた。
腹部に描かれた七の数をただひたすら眺めていた。