呼ばれてから

10分も経たないうちにリングに上がった。


それまでにお過程に入場曲は勿論ないし派手なハパフォーマンスも一切無かった。


リングに上がり相手選手のコーナーの一礼した。

後ろのセコンドの人たちは全員男で同じTシャツを着ていた。


おそらくジムのシャツだろう。

相手選手は同じ階級だけど学年は2つ上の高校三年だったので体も僕より一回り大きく感じた。


リング中央に呼ばれた。

レフェリーから注意事項を聞かされていたけど全く頭に入らなかった。下に俯いていたけどちらっと相手選手をみたらすごい顔で睨んでいた。


一度離れニュートラルコーナーに戻った。

相手選手と違い後ろには思い思いの格好をした同級生と幼馴染がいた。


どうしよう。


「良いか特攻だぞ。」


どうしよう。


「君はミドルより上が上がらないんですよ。長期戦になった技の多いほうが有利なんですから短期決戦で挑みなさいな、特攻ですよ。」


どうしよう。


頑張ってね。ケガしないでね。」


どうしよう。





そんなこんなでアナウンスが入った。

「ラーンドワン・・・ファイト!(ラウンドワン)」

カーン。

ゴングが鳴り響いた。


どうしよう、

どうしよう。



頭が体に追いついてこない。

特攻という言葉の語感だけ脳裏にこびりついていた。


どうしようどうしようどうしようどうし・・・おおお!



僕は相手のコーナー目掛けて勢いよく突進した。


この瞬間僕は何分も時間が経っているかのようにスローモーションに見えた。


相手は左手を差し出していた。


あ、シェイクハンドか。


しかしその事に気がついたとき既に僕の体は宙に浮いていた


バチン!

ものすごい衝撃音が僕の体を伝わった。


とび膝蹴りを放ったのであろう。


自分では分からなかったが勢いに任せたせいで僕はリングに倒れてしまった。


やばい。


慌てて起き上がり相手選手にむけてガッツポーズをとった。


しかし相手はリングに倒れていてレフェリーとセコンドの選手が駆け寄っていた。



00分3秒KO勝ち。



僕のk―1デビュー戦はこうやって始まった。




⑥に続く


K―1側には改めてみき達がセコンドにつく事を伝えた


高校生だけで大丈夫かと心配になり今日当たらない選手のジムから何人か人を手配すると言われたが何故かみきとしゅんが頑なに断った。



もうどうにでもなれ。


キックミットは英治さんが車で運んでくれる予定だったので手元に無いので僕のサポータをミット代わりにしてアップを始めた。


みきとしゅんが交代。


交代でサポーターを持ってくれたけどミットと違って薄いのでしゅんが

「痛いじゃないですか。もっと優しく蹴りなさいよ」

と言う始末だった。


その様子を見て他のジムの人がミットを貸してくれた。

ちょっと今日だけ移籍したくなった。


「ワン・ツー!そこからロー!」

みきの声に合わせてミットを叩いた。


サポーターと違い音がバシバシ鳴り少し自信を取り戻せたようなきがした。


軽く息が上がったせいで力が抜けてきた。


しかしやっぱり英治さんがいない不安は拭い去れない。


越前 芳樹選手。」


K―1のスタッフの人に呼ばれた。


もう間もなく試合が始まるとのことだった。


どうしよう。



そんな気持ちがこみ上げてきた。


⑤に続く





ウトウトしている間に寝てしまたのか起きているのか中途半端な状態だった。


ボケっとしているところにミみきの声がやたらやかましく聞こえてきた。


携帯で話しているのだろう。

どうしたんんだよ。体を起こしみきのほうへ駆け寄った。

「え、それで・・・あ、そっちも連絡しましたけど同じ状況で・・・。」

 

慌てた様子。

あきらかに慌てている。

よく周りをみていた乙女姉さんも電話をしている


。もちろん穏やかな雰囲気ではない。

一体二人はどうしたんだい?しゅん。

「おや起きましたか。」


しゅんは一度こちらを向き困惑したような顔で話かけようとしてきた。しかしそこにみきが間をを割って会話に入ってきた。

 

「よく聞いてくれ。なに対した事じゃないんだ。」

 いやめっちゃくちゃ焦ってる様子でしたよみきさん。

 

「実は英治さん達の車が渋滞に巻き込まれたな。なんていうかぶっちゃけ試合までに到着できない。」

 

え。

 

「それだけじゃない。電車も大幅に遅れていてまりか先生も立ち往生でここに時間までにはムリだろう。同じ理由で会長、ラッキー先輩もムリだ。」


え、え、え、えええええ!


どういうことだ。だってそんな。僕は動揺した、超動揺しまくった。

 

なんとかならないのか!電車が無いならタウシーとか!

 

「道が混んでいるんだ。どっちも駄目だよ。」

 みきは冷静に僕を諭した。唖然とした。


さっきまでのリラックスが吹き飛んで緊張が一気に襲ってきた。

 

一体今日どうやって乗り切れば良い。

頭が回らなくなった。

 

乙女姉さんはまりか先生と連絡を取っていたのだろう。

携帯を切るなり首横に振っていた。

 

「で英治さんはなんといっていたのです?」

 

「一応関係者に連絡してくれたみたいなんだけど会場の都合で開始を遅らせるわけにはいかないからこのまま予定通り大会は開くそうだ。」

 

そんな・・・。

 冷静さを欠いている僕に追い討ちをかけるように全てネガティブな情報が入ってきた。

 

その場で座り込みぼーっと3人を見つめた。

 

その時何か思いついたようにみきが中心となり3人が話し合っていた。僕はその光景をただ見つめるだけだった。

 「

芳樹。お前は馬鹿だ。馬鹿な上に無能で無知なんだ。」

 おい。

いきなり何だ、なんの追い討ちだよ。

 

「いいから聞け。こんな事態を予測していたのだろう。俺としゅんはこんな時のために普段英治さんから戦略や戦術を学んでいたんだ(月謝無料)ここは頭の切れる乙女姉さんを含めて3人でセコンドについてやる。」

な・・・なんだって。


「安心しろ。そんなお前のために今3人で良い作戦を考えてやった。心して聞いてくれ。」

 

みき。しゅん、そして乙女姉さんが目を合わせ、呼吸を合わせて一斉に唱えた。


「特攻。」


④に続く