学校に着けばその予感は当たっていた。

学校に着くなり職員室に呼び出された。


学校に越前芳樹宛の取材の申し込みが複数あったということだ。

最初は担任の先生に何をしでかしたのかと聞かれたりしたが昨日の試合のことを伝えると取材の許可が学校側から降りた。


その日の午後テレビカメラを持ってマスコミの人が来た。


直ぐに取材となるのかと思えば最初は学校の風景を撮りたいということで普通に授業をこなした。


もちろん僕にとって普通ではない授業である

一学期も間もなく期末に入ろうかというのに新品当然の教科書を出しまったく白紙のノートを出したのである。


先生からは、

「お越前今日は珍しく起きてるな。」


「それじゃあいつもと通りの風景ではないやり直せ。」

などからかわれた。


いや実際本当のことなんだけど。


一通り取り終わったあと質問に答えることになった。

「昨日の試合凄かったね。あれは作戦通りなの?」


いえ。


「他の公式試合とかの戦績教えてください。」


内緒にさせてください。


「昨日の魔裟斗選手の発言聞きましたか?」


昨日の・・・。優勝候補発言か。


「そうそう。いやぁ驚いたね。皆長門君の強さに圧巻してたところまったく無名な君の名前が出てきたからさー。」


僕の方がその100倍驚きましたよ。


「だよね。で ずばり優勝への意気込みは?」


来た。


何て答えよう。えっと・・・魔裟斗選手は尊敬しててもとより魔裟斗選手に憧れ格闘技始めたのでその人の期待にも応えられるよう・・・。


えっと。


駄目だ言葉が詰まってきた。


どうしようか。


そうだ先ほどみきからメモを渡されていたんだ。


さっと後ろを向きそのメモを読んだ。


よしこれだ。


「オレノヒザケリがヒヲフクゼ。ゼンインウチアッテケーオーシテユウショウシマス!」


こうやって僕の取材が終わった。



これ死亡フラグになってないよね?大丈夫だよね?

みきとしゅんを一緒に下校した。


3人でジムに向かったのだが2人とも爆笑していた。


まさかあの文章を本当にそのまま読むなんて。と


「お前あんなこと言って次の試合いきなり長門と当たってもしらんぞ。相手は相当怒るだろうなー。」


「なに君が公言通りまた飛びひざが火を噴いて残り全員KOすればいいのですよ。」



ちきしょう。




こいつらを信じるんじゃなかった。



②に続く




帰りは英治さんの車でみんなで帰った。


初勝利を目撃できなかった英治さんは残念だと良いながら喜んでくれた。


ラッキー先輩はこの初勝利にかこつけて祝賀会というなの飲み会をしようと会長に耳打ちしていたが会長はK―1のスタッフの人に挨拶があるとかでそれは実現しなかった。


もとよりそんな雰囲気ではくなってしまったのである。

自宅まで送ってもらい3人も一緒にそこで降りた、家では両親が待っており帰るなり試合結果を聞いてきた。


そこはすかさずさっきの「1ラウンド3秒で終わりましたよ。」の下りが始まったので僕は無視して自室に戻った。


両親からは歓喜の声みきとしゅんと乙女姉さんの爆笑としか表現できない声がこだましていた。

部屋でゆっくりしよってほど疲れもなくその後なんとなくいつもの3人で部屋で喋っていた。


もう日付が変わろうとした。


僕はいつも観ている深夜の格闘番組をつけた。


もしかしたら今日の試合結果とかやってるかなと思った。

プロレス、総合ときてK―1のコーナーとなった。ニュースキャスターの他に解説に魔裟斗がいた。


「今日開催されましたK―1甲子園。続出するKO劇に高校とは思えない試合振りで・・・。」

このコメントの最中ハイライトの一発目で僕の試合が放送された。たしかにテレビ栄えする内容ではるな。派手だ。


「君がしょっぱなですか。」

「これでお前も全国区だな。」


そんな訳あるか。

でもサインの練習しとこうかな。


しかしそんな浮かれた雰囲気は一瞬で終わる。


長門 均の試合がほぼノーカットで放送された。


立ち上がりこそ慎重ではあったが高校生とは思えない左ミドル、右ミドル。

近づこうとした相手を前蹴りで突き放しまたミドル。


そこにインローも合わせ試合を終始コントロール。


止めはここぞとばかりに豪快なハイキック。

見事なKO勝利だ。

・・・。

「いやー長門選手凄いですね!これは将来が期待できる!優勝候補間違い無し!」


その場全員が長門を讃え優勝候補と何度も連呼した。


悔しいけどもうどうもならない。これはレベルが違い過ぎる。


チート。」

「もう一回飛び膝。」


慰めてるのか奮い立たせてるか。

これがムエタイなのか。

これが長門なのか。

さっきまでの楽しい雰囲気がまた落ちた。


会場でも長門の試合を観た英治さん達が顔つきが変わった。そういうレベルだ。


そんななかニュースキャスターが魔裟斗に話を振った。

「魔裟斗さん長門選手凄いですね。間違いなく優勝候補だと思われますがどう観ていますか?」


「んー確かにこれは高校生レベルじゃないですね。でも・・・。」


魔裟斗も認めるのか。

この才能。

もうどうも出来ないのではないか?


「でも優勝候補が勝ってくだけじゃあK―1はつまなねぇ!やっぱりドラマがあるのがK―1だ!」


「俺は越前が優勝候補だと思ってますよ。」



は?



魔裟斗のこの一言により明日、僕はまた苦難に立たされることになる。



新章に続く。



ガヤガヤと周りの音が鳴り響く。


いや本当は音ではなく人の声なんだろうけどこうも人が多ければもはやこれは声ではなく音でしかない。


何てことを考察している場合ではない。

試合が終わった。


それもあっという間に。

疲労もないし怪我もない。


はっきり言って文句のない話ではあるけど実感もない。


試合が終わるとレフェリーが僕の手を摑んでリングの中央で勝利者宣言をしながら上げた。


自分のコーナーに戻って3人の顔を眺めた

皆呆気にとられていた。


開口一番に乙女姉さんがお疲れと言ってくれたのを皮切りにみきもしゅんも軽く話しかけてきたけどなんかぎこちない感じがした。


会場全体が注目してるような視線を感じた。


早々にさっきのビニールシートに戻った。



グローブを外して汗を拭いた。

すぐにジャージに着替えたい所だったがなんか疲れていてそまま横たわった。



勝ったんだ。




という感想より。

なんかしでかしてしまったのではという感情がふつふつと沸いて来た。

でもルールを侵したわけでもないし。

激しい打ち合いを制して、殴り殴られダウンの応酬の末最後の一撃で派手なKO勝利!


なんてことを想像しながら走っていたこともあった。


一進一退の攻防の末、当たったらどうなるかわからない。そしてゴング終了後僅差の判定で勝利ってのもありだろう。

いずれにしろ会場が盛り上がるに違いない。


しかし3秒で終わってしまった。

 もうすでに他の試合が始まっている。


リングに注目がいくなか手洗いに向かおうと、その場を後にした。


人と人の合間を縫い目的地の場所へ向かう中、僕とはとんでもない体験をした。


すこしぼーっとしていたため前から歩いてくる人に気がつくことができず激突してまった。


相手はかなり肉付きがいい男の人のようでぶつかった反動でぼくが倒れてしまった。


「大丈夫?」

その男の人は手を差し伸べてくれた。すみませんボーっとしてて・・・・あ!


その手を差し伸べてくれた男性はK-1 世界王者魔裟斗その人だった。


「どっかぶつけたのか?その格好選手か。」


 魔裟斗がいる。そして声をかけてくれてる。試合以上にパニックになった。あっとああえええっと。僕は立ち上がり頭を下げ改めて謝罪した。


「いやこちらこそ悪かったな・・・。ん君さっき飛び膝で秒殺したやつだろ?」

 

僕の試合をみてくれてたのか!あまりのも嬉しくて声が出なくて頷くだけだった。


「そっかそっか。名前は?」


 焦りね焦ってる頭を冷静にしようと、かまないようゆっくり名前を伝えた。


「越前か・・・。さっきの試合凄かったな。ごめん今日テレビ番組の収録できてるんで、次の試合も頑張れよ。」


そういって魔裟斗は僕の前から消えた。


頑張ってくれ。


魔裟斗が僕の応援をしてくれてた!そう思うだけでさっきの自己嫌悪にもにたく来気分が消えた!あの勝ちは誇って良いんだ!


また頑張ろう!この出来事のおかげで改めて自分の初勝利を喜んだ。

戻っていくと同じタイミングで会長と英治さんが到着した。


目が合うとすかさず申し訳ない、試合どうだったと聞かれた。

「1ラウンド3秒で終わりましたよ。」

みきが答えた。


会長と英治さんはお互い顔を合わせてこちらを見た。

「そっか。終わったものは仕方ない。いつもの顔ぶれがいなくて緊張も増しただろう。負けは悔しいかもしれないがまた練習頑張って・・・。」


いや勝ったんだって。



続いてラッキー先輩、


まりか先生がそれに続いて到着した。


「1ラウンド3秒で終わりましたよ。」


今度は乙女姉さんが少し笑いながら答えた。


ラッキー先輩は何も言わず僕肩を抱き、まりか先生は一生懸命慰めの言葉をかけてくれた。





だから勝ったんだって!!



⑦に続く