まちおこしを考えるときに、必ず最初に行うのが地域資源の見直しです。
しかも、供給者である地元視点で自然環境や歴史を見直して、ピックアップした資源を中心に情報発信して観光事業の発展を図ろうというもの。
何年これをやってきたのでしょうか?
愚かな発想であり施策です。
また、これに関して全く成功していないにもかかわらず、ほとんど疑問の声すら上がらない。
如何ともしがたい。
当ブログは、他を批判することは極力避けたいと思っていますが、新たな提案を行う前にどうしても現状の問題点を明確にしたい。
そこで一つの例をあげてみる。
南房総(内房地区)は、明治~大正~昭和前期~戦後しばらくまでは、首都圏の避暑地として大変栄えた時期があったが、その後の地域間競争とレジャーの多様化等の中で徐々に埋没して、さらにその他産業の衰退も重なり過疎が拍車をかけているのが現況です。
この状況は、全国各地の中心商店街のシャッター通り化で経営に困窮している商店と酷似している。
時代の大きな変化の中で、過去の成功(繁盛)体験にとらわれて、自店の経営がニーズに対応できていないにもかかわらず、駐車場不足・行政の怠慢等の外部環境の責任にして、感傷的に昔を振り返り、今駐車場だらけになったにもかかわらず、一層困窮している商店街の商店です。
それでは、ここで問題です。
この商店を復活させて、繁盛店にするにはどうしたらいいでしょうか?
●ヒント
この店の店主は、一念発起、寝る間を惜しんで
店内の古くなった在庫商品を見直し
昔売れた、個人的に最も思い入れのある商品を心を込めて磨き
きれいに並べ直しました。
さて、売れたでしょうか?
みなさんの近所にもよくあるであろうお店です。
近所の商店街にある具体的なお店を想像して考えてみてください。
カチ
カチ
・
・
・
はい、時間です。
あなたは、
郊外の何でも揃う大型ショッピングセンターに行くのをやめてこの店で買い物しますか?
話題の全国チェーンの大型専門店に行くのをやめてこの店で買い物しますか?
最寄りの激安店に行くのをやめてこの店で買い物しますか?
おしゃれな話題の商品が揃ったお気に入りの店に行くのをやめてこの店で買い物しますか?
店主が頑張ったことは評価しますが、このお店が復活して繁盛することはないでしょう。
なぜならば、まず最初にしなければならないのは、今ある在庫を見ることでは無く、お客様を見ることです!
お客様のライフスタイルがどのように変わり、その結果いま何を求めているのか?
それを徹底的に考え、検証することから始めなければなりません。
商売の基本として、あくまでも視点は、供給者側からでは無く、お客様視点でなければ継続的な繁盛はありえません。
その中で、自店が提案できる業態は、どんなものなのか?
マーチャンダイジング(商品政策)を再構築しなければなりません。
そして、再構築にあたっては、ほぼ100%新商品を中心に考えなければ成功はありえないでしょう。
近所の商店街の商店を想像してみてください。
いくら磨いても過去の商品だけではほとんどの場合無理です。
ましてや、店主の個人的な思い入れは、お客様には関係ないので、それらの商品は、店内から自宅に移し、大切に保管すればいいのです。
ただし、新商品といっても自らの経験や知識、人脈等が活かせなくては、差別化のための特長を出すのが難しく、リスクが大きくなってしまいます。
そのため、全くの異業態に手を出すのは賢明ではありません。
さらに、もう1点。
マーチャンダイジングの前に、より基本に近い視点の必要性を提案しなければなりません。
商品が不足していた時代は、供給者側からの視点でもお店成立したので、売る側の都合で類似品を集めた業種店がほとんどでした。
野菜を集めて売る「八百屋さん」
魚を集めて売る「魚屋さん」
お酒を集めて売る「酒屋さん」
洋服を集めて売る「洋服屋さん」
全て供給者側の都合で、集めやすいもので品揃えした専門店です。
ところが、今の繁盛店の多くは、業態店になっています。
対象となるお客様(客層)とお買物の動機に合わせて品揃えをしたお店です。
食品の購入一つとっても今の消費者は
「毎日のおかずを買う近所の食品スーパー」
「給料日前に利用する激安ディスカウント店」
「ハレの日のちょっと豪華な食材が揃う大型ショッピングセンター」
「こだわりのお客様を迎えるときに利用するデパ地下」
といったように動機で使い分けています。
その代表が、日本で育ち確立した業態「コンビニ」です。
お弁当やおにぎりを中心にすぐに食べられる加工食品やドリンク、週刊誌など、日常、高頻度に購入する品を集めた業態。
若者を中心に無くてはならない業態に育っています。
このコンビニについては、後日相当深く掘り下げますので一言だけ触れておきます。
いづれにしても従来の「○○屋さん」では、分類できない業態店が主流です。
観光を中心としたまちおこしにおいてもこの視点が欠けてはならないでしょう。
『お客様視点』
『客層の絞り込み』
『来客動機の明確化』
ごく基本的なことだと思いますが、おかしいですか?
お客様を見るより先に、地域資源という在庫を見てしまっていいのですか?
最初の1歩から違っていませんか?
過日も館山市観光協会が主催した旅行ジャーナリストの講演会並びに市長や地元出身の大学教授等を招いたパネルディスカッションがありましたが、とても残念な内容でした。
何十年前から聞いてきたことの繰り返しで、観光資源をそれぞれの視点から評価して
「豊富な資源があるが、活かしきれていない」
「原因はPR不足だ」
との結論。
私の周囲でも「このような話は、幾度となく耳にタコができるほど聞いた」との感想が聞かれました。
確かに、遥か昔の昭和の時代だけでもどれだけ聞いたか?
何度も繰り返しになりますが、「海、花、温泉、寿司、里見、スペイン・・・」と、観光資源を羅列した時点で、それらの優劣を問うよりも、視点が供給者側になっていることに気づかなければならないのです。
ましてや、今は21世紀になって10年も経っています。
21世紀は、ライフスタイルも価値観も大きく変わるのではなかったでしょうか?
いや、すでに大きく変わり始めていませんか?
残念ながら次世代を視野に入れた提言があったとは思えない内容でした。
意図しない批判的な内容が多くなってしまったので、次回は、これらを前提にして、まずは大所高所から提言してみます。
それでは、南房総の明るい未来を願いつつ
これを読まれた皆様が、今日も一日お幸せでありますように♪