村上春樹の作品を読んでいると、"現実"とは何かを突きつけられる。

その多くに痛みが伴うのだが、そこから逃げることはできない。すると、次第に逃げるどころか自分からその痛みを求めに行くようになる。


『色彩を持たない多崎つくると彼の巡礼の年』


高校時代から仲の良かった5人グループから排除された彼は大学2年生の夏、死の瀬戸際を彷徨った。それから20年の歳月が流れ、その原因を知るために、4人のもとに巡礼する。

現実から目を背けることは現実を直視することより苦しいことだと思う。だから主人公はこれを捨てた4人のもとへ巡礼することを決心できたのだろう。


彼の作品のテーマは人間関係や絆ではない。
人の死や愛情でもない。

"現実と向き合うこと"

だから彼がシャワーを浴びることや食事をすること、何時に寝て起きるなど、日常の細かなところを描写しているのだろう。


"現実"

それは無数の物事の集合体である。