東京の某署に勤務する刑事の私。
今日は先日起きた殺人事件の第一発見者に話を聞きに彼女の家までやってきた。
第一発見者の彼女、実は銃で撃たれて殺された被害者の奥さんでもある。
彼女は事件当時、殺害現場である自宅にいたのだが事件にはまったく気づかなかった。
普通ならここで怪しむべきだが、今回は気づかなかった事こそが普通だった。
なぜなら彼女は耳が聞こえないから。
「去年まではね、この耳もちゃんと聴こえてたんですよ」
なるほど、だからか。
耳が聴こえないときいていたので喋ることもできないのかと思ってたけど、耳が聴こえないとは思えないほど綺麗にしゃべっている。
「耳が聴こえてればすぐ事件に気付いていたのに…。事件があったっていう時間もこうしてこの縁側でお茶を飲みながら庭を眺めてたの。犯人を逃してしまったのは全部私のせいだわ…」
『そんな事ありませんよ。』
慰めの言葉を紙に書いて彼女に渡したその時、向かいの家がリフォームでもしているのか工事の音が鳴り響いた。
なるほどね、この音じゃ耳が聴こえてたとしてもちょっと銃声はわかりづらいかも…。
彼女は声を少し大きくして言った。
「風が強くなってきましたね。中で話しましょうか。」
(投稿:えけこ様)