【これさえあれば…… 後編】

 革新的な技術を手にしたとき、「これさえあれば、なんでもできる!」「これさえあれば、勝てなかった相手に勝てる!」 、そう考えてしまうことは人間として仕方のないことです。


 いま、高度に発達し社会インフラに大きく食い込んだコンピューターを前にして「これさえあれば……!」と思っている人は、100年前であれば大空を舞う航空機を前にして「これさえあれば……!」と思っていた人なのでしょう。


しかし、どれだけ同情したとしても、ひとつの技術を取り上げて「これさえあれば……!」と考えてしまう人は、戦争を考える上で極めて幼稚であると言わざるを得ません。


理由は簡単です。


もし、「これさえあれば勝てる」というような絶対的な力をもつ技術があったとして、

あなたの敵がその技術を使ってきたら、どうするのですか?




「だからこそ、相手に劣らない技術を開発するのだ」というかもしれません。しかし、技術開発はというものは、携わっている人であればあるほどわかると思いますが、頑張ったからといって一朝一夕にできるものではありません。


ひとつの技術が開発されるスピードに比べたら、一回の戦争の期間はあまりに短すぎます。ましてや、最初から格差があった場合は、戦争中に逆転することはまず不可能です。




だったら、どうすればいいのでしょうか?


そこで多くの人が思いつく解法が、
「偶然発見された新技術を活かして、短期決戦で勝利を掴む」
ことなのかもしれません。

「零戦と戦艦大和」思考とでも呼べばいいのでしょうか。



しかし残念ながら、戦争とはそのような単純な解法が役に立つような単純な事象ではないのです。


これを「絶望」と受け取るか、「福音」と受け取るか、それによって、あなたの「戦争」への理解度がわかることでしょう。