【トランプ政権は道を踏み外しつつあるのではないか? (翻訳) 前編】


 米海兵隊ドクトリン(MCDP1)を開発した第一人者であるウィリアム・リンド氏が、トランプ政権に対する意見を述べていたので、(勝手に)翻訳します。

注目するべき点は
・「第4世代戦争」(複雑化する戦争…テロリストとか)の概念
・「第4世代戦争」の脅威の方が、既存の国家の脅威よりも重大
・ISISなどのテロリストと戦うためには、旧西側諸国よりもロシアや中国の方が役に立つ


とリンドが考えている点です。
なお、リンドはトランプ政権誕生時、トランプ大統領を支持していました(http://www.theamericanconservative.com/articles/what-trump-can-do-for-defense/)。


なお、今回翻訳した記事のリンク元は、以下のものです。
http://www.theamericanconservative.com/articles/going-off-the-rails/



(本文はここから↓)


 大統領に選出されたドナルド・トランプは、「移民問題」「自由貿易」「ポリティカル・コレクトネス」そして「戦争を辞さない上での同盟諸国に対する指導力の追求」という4つの課題に直面している。これらの課題を適切に解決することなくしては、彼の再選はないであろう。

 残念ながら、この第4の課題たる戦争に於ける指導力の追求に関しては、彼の稚拙な政策は既に「レールを踏み外して」きていることが明らかになりつつある。当初掲げていた外交・防衛方針の斬新さとは裏腹に、現時点でみえてくるものは、以前と大してかわらなものでしかない。この分野に関する当初の人事が発表されてすぐ、トランプ政権の閣僚達は、米国と諸外国の同盟関係はいままで通り堅持されると確信させるため、各国を訪問した。これらの同盟関係は冷戦時代の遺物であり、もはやその価値は疑わしいものになってきているのではなかったのか? 特に、もしそうであるのであれば、トランプ大統領が約束していたように、我々はロシアとの関係を良好にする道を模索しているところだ。


 選挙活動中のトランプ大統領は、これらの同盟関係のことを、ほとんど「たかり屋」とでも言いたいかのような強烈な言葉で批判していた。彼の言葉では、米国は同盟諸国の戦争のために様々な支援をしてあげているのに、同盟諸国はほとんど見返りをくれないという話だった。同盟諸国の軍隊は、殆どパレードのために最適化されてしまっている、それも小規模のパレードにしか使えない。一例を挙げると、ドイツ陸軍は全部あわせても戦車を225輌しか保有していないし、それはルクセンブルクとのトラブルを起こすことしかしていない。


 トランプ大統領は、「反戦主義者予備軍」だと思われていた。しかし、アフガニスタン戦争の終結や、もっと広い視点で中東情勢の安定化に関するいかなるアナウンスも、ホワイトハウスからはきこえてこない。ISISを打倒するための行動を開始するべきだ、少なくとも彼らが特定の領土を持つような事態は阻止しなければならない。しかしその後のことはどうするのか。知恵のある第4世代戦争(複雑さを増した戦争のこと)の主体やヒズボラのような国家に属さない軍隊は、領域を持った国家になろうとするよりも寧ろ「実態のない国家」として行動するだろう。アルカイダにも似たISISは、第4世代戦争を遂行する「ヒュドラ」(斬れば斬るほど頭が分裂する怪物)の代表ともいえる存在である。第4世代戦争を行おうとする組織からの挑戦に直面した我々としては、どのようにして既存の国家というシステムをまもっていくべきであろうか。

 その答えの鍵となる第一の存在が、ロシアであり、次いで中国である。両国との連携は、第4世代戦争に対抗する有効な前線を構築するため、不可欠である。現状の同盟諸国(要するに西側)と違って、両国は大規模で余裕のある陸上部隊を保有している。ドナルド・トランプ大統領候補の外交政策に於ける独自性は、ロシアとの信頼関係を構築するという点にあった。それは、ロシアと少なくとも友好な関係を模索し、可能であれば正式に和解するというものだった。このアイデアは、いまどこにいってしまったのか? トランプ政権の態度は、国連でも、他の場でも、反ロシアの立場をとっている。ロシアに対するばかげた制裁が、クリミアの件に対して行われている。クリミアは、歴史的にずっとロシアの領土であったのだ。


(続く)