戯曲『広い世界のほとりに』 | 渡部遼介オフィシャルブログ「Ryosuke’ Note」powered by アメブロ

戯曲『広い世界のほとりに』

2006年にイギリスでオリヴィエ賞「BEST NEW PLAY」を受賞したその戯曲が日本で初めて翻訳され、今、手元にある。先月末からのTPTワークショップに参加している。

最近の作品であるからか、同じく手元にある古典『人間ぎらい(孤客)』よりも映像的で、長台詞も少ない。僕には岩松了作品を思い出させた。

あまり説明もなく、読み進めていくうちに何となく解ってくる。しかし漠然とせず興味も失わせないところが大きな長所だ。

とても気に入るタイプだが、もし僕がこういう作品を書き上げたら心配することがある。

『俳優や演出家は、ちゃんと台詞以外を膨らませてくれるだろうか? 作品から離れずに?』


それはスタッフを軽んじているからではなく、日本の土壌として他にもっと優先度の高い事項が待ち受けているからだ。予算による稽古日程、打ち合わせの削減。ギャラによれば時間を割くことさえ限られるかも知れない。当然、戯曲の完成度も軽視される。
その他では暫定的な有名人のキャスティング。作品よりタレントを楽しみにする観客。キャストだって戯曲を読み込むことより、別の作業に忙殺されるかも知れない。

だがそれ自体日本の傾向であるが、決して悪いことではない。なぜならそれによって、実際に国から大きな保護を受けていない日本でのエンターテイメントを存続させることが出来ている。
ただし根本的な問題を先送りにしていることも確かだ。

僕がTPTを好きなのは戯曲のレベル(非常に高い)。そして実直なスタイル。それによって多くの業界人に愛されていること。あとは好みや仲間内で固まらず、常に大きな懐(ふところ)を用意してあれば、才能は自(おの)ずと集まってくるはずだ。