【サッカー選手は注意すべき障害】


サッカーで高みを目指すためには怪我をしないことも必要条件の一つです。

怪我が多い選手は、良い成績を残したくても中々うまくいきません。


特に、骨折、靭帯損傷、半月板損傷、軟骨損傷、重度の肉離れなどは復帰に長い期間を要すため、予防を考えた方が良いのは言うまでもありません。また、スポーツ障害が新たなスポーツ障害を生むこともあり、負のスパイラルに陥ることもあります。


サッカー選手の怪我は多種多様ですが、パターンとして大きく以下のものがあります。


①突発的な急性外傷
→足首の捻挫、膝の前十字靭帯損傷、裂傷など。相手との接触やその時の転倒により突発的で想定外に起こる場合が多い。


②負荷の積み重ねによる慢性障害
→同部位への繰り返し負荷で組織の微細損傷による炎症など。外脛骨障害、シンスプリント、アンテリオールニーペイン、グロインペイン症候群など。症状が全くないところからいきなり痛くなることは少なく、多くの場合違和感から始まる。それを放置しておくと痛みに変わっていく。


③負荷の積み重ねが呼び込む急性外傷
→前十字靭帯断裂などのように、突発的に起こったかのように見えるが、骨や筋肉の微細損傷が温床になっている。また、疲労のためにイメージ通り体が動いていない場合は、非接触での発生率が高まる。


②と③は、ほぼ言い訳の余地が一切ない選手自身の責任、と選手自身はシビアに考えておいた方が良いです。実際は、チーム全体のオーガナイズがうまくいっていない時にもスポーツ障害が増えます(特にジュニア年代の場合、運営スタッフやコーチングスタッフ、または家族の責任が大きい)。責任の所在がどこにあるにしろ、現役の選手は常に自分の身体に向き合い続ける必要があります。そうすれば、怪我で悔しい思いをすることはなくなってきます。



具体的な症例を挙げるとキリがないので、サッカー選手に特異的に起こるスポーツ障害として「Jones-fractures(ジョーンズ骨折)」を考えてみます。


サッカー選手に多い障害のため、選手自身もその知識は持っておく必要があります。


ジョーンズ骨折は予防を考えて行動すれば高確率で防げますが、無頓着だと誰にでも発生する可能性があります。また、ジョーンズ骨折の予防を考えた行動は、他のスポーツ障害の予防にも十分なります。
※スポーツ障害予防とは、スポーツ障害の発生率を0%にすることではありません。発生率を究極に0%に近づけることです。詳細は省きますが、ここを履き違えると返ってマイナスになるので注意が必要です。





◎ジョーンズ骨折とは?

〈足の甲の外側に痛みを感じる。徐々に違和感が大きくなり痛み出すこともあれば、急激に痛くなることもある。サッカー中は違和感や痛みがあるが、やめると痛みが収まる、圧しても痛くない、歩くのも大丈夫、などが初期段階の症状。それがひどくなると、圧すと痛む、熱がある、腫れている、歩くだけで痛む、などが出てくる。さらにひどくなると安静時にも痛みを感じる。ただ、この骨折の厄介なところは、無症状でも骨折しているケースがあることです
〈ゾーンⅡが狭義のジョーンズ骨折部位。足の甲の小指側が痛くなる。ゾーンⅡは血流が乏しいエリアのため、偽関節となり遷延化しやすい(骨折部位が癒合しにくく不安定のまま治りにくいということ)。再発のリスクが高いということになる。ゾーンⅢも治りにくいエリア。ジョーンズ骨折の理解は、情報の古い新しいでもかなり違うので、サイトで調べる場合注意が必要です。また、詳細は飛ばしますが英語圏と日本で理解の仕方が違う部分もあるのでそこも注意が必要。ジョーンズ骨折に関する研究は数多くあるが、「これをやれば必ず予防できる!」というものはありません。ゆえに、発生率を限りなく0%に近づけるには、選手一人一人が己の心身と向き合う必要があります。そのためのヒントとなる知見は山ほどあります



◽️ジョーンズ骨折の概要
足の甲の外側に起こる骨折。正確には第五中足骨近位部の骨折。繰り返される負荷による疲労骨折のパターンと一回の外力で骨折が起こるパターンがある。しかし、後者の場合でも、積み重なった骨の微細損傷が障害の温床になっていることも示唆されている。

◽️障害部位
・足の甲の外側(第五中足骨近位部)

◽️症状
・継続的な痛みがある(無症状のこともある)
・圧すと痛む(痛くないこともある)
・歩くと痛む(痛くないこともある)
・腫れている(腫れないこともある)
・触ると熱がある(熱がないこともある)
・サッカーにおいては、軽いジョグ、軽いキック、シューズのヒモを強く結ぶ、スパイクのポイントからの突き上げで痛むなど

◽️確定診断
・X線、MRI
※サッカーの現場では、オタワ足関節ルールを用いることで、ひとまずの除外診断は可能。しかし、確定診断は必ずX線やMRIが必要。

◽️発生する瞬間の動作(発生機序)
・急ターンした瞬間
・踏み込んだ瞬間
・ジャンプからの着地の瞬間  など
※足の動きでいうと、つま先外側荷重のまま内側にこじるような床反力が加わった瞬間、第五中足骨近位部に応力が加わるため発生する。

◽️サッカー復帰までに要する期間
2〜4ヶ月
※症状により個人差あり。

◽️治療法
・手術療法
・保存療法
※再発予防や早期復帰を目指す場合、手術の方が望ましい。

◽️環境による発生リスク
・ピッチの硬さ(人工芝はリスクが高いとされる)
・練習量の多さ(特にカテゴリーが変わった年)
・過密スケジュール(疲労回復の時間が取れない)
・スパイクの問題(足の形に対しアッパーのつま先やヒールカウンターが狭すぎないか、ウィズが適切か、ポイントの位置や形、サイズ、ヒモの結び方など)
など

◽️選手自身が保有する発生リスク
・股関節の硬さ(特に内旋可動域の低下)
・足首の硬さ(特に背屈可動域の低下)
・足の指の硬さ(特に親指の背屈可動域の低下)
・体幹の硬さ(全方向への可動域の低下)
・基礎筋力の不(特に体を支える力)
・外側荷重のクセ(様々な理由が入り組む)
・キックのクセ(軸足外側に負荷がかかる蹴り方はNG)
・不良姿勢(過度なO脚や下腿過外旋、回外足など)
・身体コントロールレベルの低さ(ここが重要)
・既往歴の有無(特に足関節内反捻挫の経験者は注意)
・コンディションの悪さ(疲労回復が不十分など)
・栄養不足(運動強度が高まる高校年代は特に注意)
・緊張(過度な緊張はパフォーマンスを下げる)
など

リスクがたくさん挙げられるからこそ、どこにリスクがあるかを抽出する評価が必要となってくきます。

◽️その他
・アジア人に多いというデータもある。




Jones骨折は、他のスポーツと比べるとサッカー選手に多いスポーツ障害です。
※他の競技では、ラグビー選手やバスケットボール選手にも比較的多い。


その理由は以下の3つが考えられます。

①サッカーには急激な減速、ストップ、ターン、ジャンプ、着地、ターンしながら加速など多様なステップが求められる。

②ボールのキックが頻回にある。

③対人スポーツなので、自分の好きなタイミングではなくリアクションでそれらの動作を行うことが多いため、動きにくい体勢からでも動かなければならない場面が多く、その時に負荷がかかる。



ターンやストップなどにおいては、両足どちらにも発生するリスクが考えられます。ボールキックにおいては、軸足側に発生するリスクが大きいです。

つまり、

ステップワークとキックの両方でリスクがあります。

これが、サッカー選手にジョーンズ骨折が多くなる理由と考えられます。



近年の日本を代表するトッププレーヤーでは、小野伸二選手、玉田圭司選手、香川真司選手、清武弘嗣選手などが第五中足骨の骨折をしています。


例えば、香川選手はブンデスリーガのボルシア・ドルトムントで、チームの主力として、観客を魅了しワクワクさせるようなスーパーパフォーマンスを発揮していた頃に骨折しました。


当時の香川選手の動きを観察すると、その身体コントロールの巧みさからは第五中足骨の骨折を起こすようには見えません。
※あくまで私見です。

 それは、プレー中の全身の動きのフォルムや印象、スローで関節の動きを見ても骨折を引き起こすようなリスキーな動作には見えないということです。
※もちろん、ちゃんとスクリーニングしないと見えない部分もあります。


具体的には、

股関節↔︎体幹(脊柱、胸骨、鎖骨、肋骨)↔︎骨盤↔︎腕の連動などです。動きがキレイでキレがあり、スムーズな動作の選手はやはり見ていて分かります。
動画から見る細かい動作分析は、スローモーションも利用しないと難しい場合も多いですが。
※走動作やステップ動作において、適切な重心移動や体の各部位の関係性の良し悪し、反射動作が見て取れるか、その余裕度はどうかなども注目です。

身体の動作に大きな問題がなければ、他に骨折した理由があったかもしれません。

香川選手のような、ハイレベルな技術とフィジカルがあり、素晴らしい環境でサッカーをやっていても、時には第五中足骨の骨折は発生してしまうのです。

ゆえに、サッカーをやっている選手はすべからくジョーンズ骨折の予防を考えるべき、と言って良いと思います。

(先程も言った通り、ジョーンズ骨折の予防プログラムは、他の障害予防にも繋がりますしね。)



もちろん、あのレベルのプレーとなると、そこを経験した者にしか分からないようなプレッシャーがあると思います。大きいプレッシャーや疲労は人体の構造上、スポーツパフォーマンスを大きく下げます。もしかしたら、その辺りが怪我の遠因になっていたかもしれません。
※日本トップクラスの選手でも、欧州4大リーグなどのトップカテゴリーのチームに所属した場合、さすがに余裕がなくなることも多くなるので強引なフットワークやキックが増えるのが見てとれます。


また、ジョーンズ骨折の障害予防の実践は、アジリティを高めると言ったパフォーマンスアップと同じ方向を向きます。

つまり、同じトレーニングで障害予防とアジリティ向上が可能となります。









〈2011年アジア杯準決勝日本対韓国(日本がPK戦の末、勝利しています)。香川選手(10番でオレンジのスパイク)は後半31分、もしくは32分のプレーで第五中足骨を痛めたと思われます。この辺りの場面のどの踏み込みの一歩で痛めたかまでは明確にできませんし、明らかに前外荷重になっている瞬間があるかはこの映像では分かりません。しかし、この直後のプレーで明らかに右足を痛がる素振りを見せ始めます。右足を気にするように振り上げたり、ケンケンをするような動作をしたり、パス&ゴーで相手についていかなかったりしています。それでも後半41分まではプレーしています。逆に言うと、第五中足骨基部の骨折は意外と動けてしまうんです。だからプレーを続けてしまい悪化もしてしまう。しかし、交代の直前には歩容も正常ではないように見えます。そして、延長戦に入る前の円陣では、明らかに歩容に異常があるのが見てとれます。香川選手にとって、特別ではないいつも通りのワンプレーだったはずです。だけど痛めた。痛めた原因は何なのか?上記に挙げた何かがあったのか?それともそれ以外の何かか?ドルトムントでは、最高のパフォーマンスを維持していた矢先の骨折で、復帰まで4ヶ月ほどかかっており、この怪我がなければもっとワクワクするようなプレーを魅せてくれたと思います。最近も怪我との戦いも続く香川選手ですが、また最高のパフォーマンスを魅せてくれると思います〉



どうでしょうか?

サッカー選手にとって、ジョーンズ骨折は予防を考えた方が良いと少しでも思えたでしょうか?


具体的なチェック法や予防メニューは、機会があれば書きたいと思います。


最後までお読みいただきありがとうございました。


追伸


他のブログの記事などでもちょこちょこ書いてますが、今の時代、具体的な手法をたくさん知る前に、思考法をしっかりさせることがアスリートに求めらる時代です。もちろん障害予防もそうです。ゆえに、軸のないまま、YouTubeなどで手法だけを追いかけることは注意した方が良いと思います。


思考法や手段など、具体的なことを知りたい選手はご連絡くださいませ。


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