小沢健二『我ら、時』(通常版) | 佐藤良成オフィシャルブログ「佐藤良成のCD原人」Powered by Ameba

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同時代の日本の音楽を聴かずに育ったミュージシャンが、ふと人の作品を聴いてみると、そこは宝の山だった! 音楽シーンの知識ゼロ。チャートの知識もゼロ。ナタリーも音楽雑誌も読まない、J-POP的には原始人と言っていい男が綴る、CDレビューブログ!

EMI[ユニバーサル]
TYCT-60031(3枚組) ¥3,780
2014年3月19日発売
※この作品は、本や雑貨がセットになったボックス商品から、
ライブCDだけを再発売したものです。



曲作りというのは人それぞれ方法が違います。ルールなどなく、どうやって作っても構わないということです。最初から譜面に書いて作る人もいるでしょうし、まずコンピュータでリズムを決め、それに音を重ねていく方法もあります。しかし、自作自演のシンガーソングライターの場合、楽器でコードを弾きながら、それに合わせて思いつくメロディーを鼻歌で歌って作る方法が一番一般的だと思います。俺もそうです。それにしたって、楽器がギターなのかピアノなのか、または別の楽器なのかによって自ずと作風は変わってきますし、歌詞が先にあってそれに節をつけるのか、何もないところからメロディーを思い浮かべるのか、詞もメロディーも両方同時に考えるのかによって、やはりできる曲の感じは変わります。人の曲を聴いていると、自分の曲とは明らかに生成過程が違うものがあったりして、これはきっとこういう手順で作ったんだろうなと勘ぐるのも楽しかったりします。

小沢健二氏の曲は、リアルタイムで耳にしたときから何となく耳慣れない感じがありました。まだ曲を作るようになる前だったので、そのときは漠然と思っただけで理由はわかりませんでしたが、今回このライブアルバムを通して聴いたことで、気づいたことがありました。

それは、作った本人にさえ歌いづらそうな曲だということです。

まず、キーの設定が異様に低いです。低い声は出しづらく、声量も小さくなりますから、バンドの音に埋もれて音程も取りづらくなります。なぜ自分の声の音域に合った、歌いやすいキーにしなかったのか不思議です。

それから、メロディーの一節一節が非常に長いです。もし小沢氏が歌詞を先に作っていたのだとしたら、歌詞のセンテンスがそもそも長いためかもしれませんが、そのうえ、その長い一節にかなりの文字数が詰め込まれています。しかも、最後の音が伸ばす音だったりすることも多く、特にライブ盤で聴くと、かなり息が苦しそうです。

前述のように、実際に口ずさみながら作る場合、自然と自分にとって気持ちのよい音域、息の続く長さで作ることになりますから、こういったことは起きないと思うのです。小沢氏はかの名曲群を一体どのように作ったのでしょうか。