細野氏の作品には、元ネタがあって作られているものが結構あります。もちろん誰の曲にだって、それが意識的にマネしたか無意識のうちに影響を受けたかの違いはあったとしても、大概似ている曲はあるものです。
しかし細野氏の場合、その元ネタの選び方にやはりヒネリが利いていて、ちょっとやそっとでは気がつかないことが多く、ずいぶん経ってからふとしたタイミングで、「あっ、この曲のリズムパターンとギターのサウンドの感じに、この曲の英語の歌詞を空耳アワーみたいに語呂合わせで載せたら、『はっぴいえんど』のあの曲みたいになるじゃん!」などと気づいたときには大変嬉しいものです。また気づいたら気づいたで、その素材の扱い方の巧みさに唸らされるばかりで、元ネタと聴き比べて細野氏のセンスを味わう愉しみもあります。
前作、前々作に引きつづき、古いカントリーソングのカバー中心のこのアルバム、過去の細野作品の引用元を細野氏本人の歌でほんのり答え合わせをしてくれるという何とも贅沢な趣に満ちているように思います。
中でも「When I Paint My Masterpiece」は、今回、細野氏の訳詞による日本語のバージョンを聴いて初めて、氏の1973年のソロ作品としてのファーストアルバム『HOSONO HOUSE』に収録されている「住所不定無職低収入」に似ていることに気がつきました。The Bandのバージョンも、Bob Dylanのオリジナルも、細野氏の「住所不定~」も大好きでさんざん聴いてきたのに、今まではそんなこと思いもしませんでした。具体的にどこのメロディーが似ているとかではなく、メロディーの間の取り方に、確かに共通点を感じます。