【カフネ】
大盛堂書店さんでとても推されていたので購入。
間違いなく読んでおいてよかった一冊だった。
メインは野宮薫子と、その弟の元恋人である小野寺せつな。
全く性格の異なるふたりは薫子の弟春彦の急死から繋がり、「カフネ」という家事代行サービスを通じて徐々に距離を縮めていく。
カフネではチケットと呼ばれるサービスがある。これはカフネ利用者にチケットを発行して、家事代行者を必要としている人にチケットを渡してもらい、2時間無料で家事代行をしてもらえるというサービス。このような取り組みは既にあるのかもしれないけれど、とても良い仕組みだと思った。知っている人から紹介してもらえる安心感と、先ずは体験ができるという利点がある。懸念としては、それを素直に使える人柄であるかどうかだろうか。
p.205にて、せつなが死に方の持論を披露する。正直この価値観について自分は完全に同意。死に方を自分で選ぶ自由は誰もがもっていて良いと思う。ただし、その時は自分に関わってくれている人への配慮は少なからず必要だと思う。というより、もし選択した死が自死ならば必須だと思う。
この小説の魅力は美味しそうな料理がたくさん出てくるところ。それも、自分が自分のために作るものでなくて、誰かのために作られた美味しそうな料理であるところ。p.247、「〜この子にとって何かを作って食べさせてあげることは、『好きだよ』って伝えることことなんだなって」には愛情が嫌というほど伝わる。
『カフネ』の由来について作中に出てくるけれど、日本語でなかなか表現できない言葉でも、意味を知ると言いたいことがよく分かる。むしろ日本語でこの表現の言葉欲しいなとさえ思う。
薫子とせつなの遠慮のない関係性も魅力的で、このふたりの行く末を是非読んで欲しい。あと、薫子の弟春彦の人間性が出来すぎてて、良い弟過ぎてつらい。
大盛堂書店さん、素晴らしい本と出会わせて頂きありがとうございました。
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