【百年法】

・山田風太郎賞
・山本周五郎賞
・2013年本屋大賞第9位


読んで楽しく、しかし空恐ろしい小説。

HAVIという不老処置を受けることができるが、処置を受けたなら百年後には死ななければならない、という通称「百年法」が成立した日本共和国というもう一つの日本が舞台。


百年法というフィクションの設定ながら、読者に突きつけられているのは「あなたならどう生きますか?死にますか?」とでも言うような、全くもってフィクションでは片付けられない問いである。


人物たちは皆、伏線になるような素晴らしい構成。
読めば、誰かしら推しが見つかること間違いなし。
それだけ誰もが置かれている状況や性格は違えどカッコ良いキャラクターたち。



物語は百年法により適用者が出る直前から、どう百年法に向き合っていくかをテーマに始まっていく。
そこから面白くなっていくのは、百年法に対する考え方がある意味180度違う考え方をもつ者たちが物語を展開していくからだろう。


百年法という大枠でのテーマは変わらず、しかし前半とラストでは物語の印象がだいぶ変わってくる。
前半は、不老処置を受けたら百年法によって長くても百年後には死ななければなりませんよ?としておきながら、後半では不老処置を受けたことであなたは不老ですが、百年生きられるかわかりませんよ?みたいな展開となる。あなたならどう受け止めるだろう。自分ならとても冷静でいられるとは思えない。




健康に長く生きることは大事だし、法によって死ななければいけないのなんてまっぴら御免である。でもこの小説を通して感じるのはどう生きるか、に尽きる。そして、限りある一生をどんな終わり方であれ、この人たちのような、常に前向きな決断を選択し続けられるカッコよい自分らしい生き方をしてみたいものだということである。




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