【未必のマクベス】


先ず言っておきたいのは、こんなに読み心地の良い文章が存在することに驚いたこと。
p600頁を超える物語でありながら、読んでいてそれだけの頁数をこんなにも感じないのかと驚いた。
まるで言葉が染み込んでくるような文章力に魅了された。



さて、物語に触れる。
『マクベス』はシェイクスピアによる四大悲劇のひとつである。この物語ももれなく悲劇的である。まあ、犯罪小説×恋愛小説の組み合わせってだけでも喜劇にはならないだろうけど。


物語の語り手(主人公)の中井優一は「王として旅を続けなければならない」と予言めいた言葉を告げられる。
王とは何のことか、旅とはどこへのことなのか考えながら、序盤は正直シンプルに読み易くて面白い本だなあ、くらいに感じていた。しかし、p.179から始まる章で印象が一変する。この衝撃をぜひ味わってもらいたい。


そこからは犯罪小説らしくハードボイルドな展開もありながら、恋愛小説らしい甘さも顔を出す構成が見事。
細部はもう忘れてしまったけれど、伊坂幸太郎著『ゴールデンスランバー』を読んだ時も似たような感情だった気がする。
終始、読み易くて面白い。


物語の感想についてはこんな感じかな。
余談で語っておきたいのは、p.51に出てくるこんな表現が刺さった。


彼女のワイングラスは、うまくいけば、ため息でスパークリング•ワインに変わるかもしれない。


そんなことを発想できるくらい余裕のある大人になりたいな。





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