自分が大学生の時に受けていた国際関係論の教授が「日本の常識は世界の非常識だ」、と言っていたのを聞いて、その時はその意味がなんとなくしか分からなかったが、今はその意味がよくわかる。その教授ももう少しかみ砕いていろいろな例を出して説明してくれればもう少し前にわかったのに、と今となっては思う。

 言われつくされている例だが、日本のコンビニでは、買ったものを袋に入れてくれるだけではなく、持ちやすいようにビニールの持つところをくるっと丸めて、しかも客が出す指にかけてくれるところぐらいまでやってくれる。これが日本ではいわゆる常識になっているわけだが、アメリカなど海外では、店員はほぼ買ったものに気を遣うことなく、ごそっと袋に入れるだけ。このように日本のようなやり方を海外でもしてくれると思うな!ということなんだと思う。

 この素晴らしい日本の店員さんの振る舞いが、日本のおもてなし、あるいは配慮なんだ、と言われればその通りなんだが、海外ではそのおもてなし・配慮というのはサービスとしてしっかりとチャージ(請求)できているところが大きな違いだと思う。誤解がないために言うが、海外でも素晴らしいおもてなしや配慮をしてくれるところはある。ただし、それに対して客はいわゆるチップとしてそれに対して対価を払っている。一方日本では周りの競合店も同じレベルのおもてなし・配慮をしていて、持ちやすいようにビニールの持つところをくるっと丸めることがいわばスタンダードになってしまっているので、逆にそうしないと客が来なくなってしまうのではないか、という強迫観念からそうしないといけなくなっているんだと思う。また、客側もそれに慣れてしまっているので、一度慣れてしまうと、そうしないと不満を覚えるんだと思う。

 とはいえ、日本では徐々に労働力不足が問題になってきているので、これからは今までと同様のおもてなし・配慮ができなくなってくるのではないか、と思う。現に、無人レジも徐々に増えてきている。また客側も今までと同様のおもてなし・配慮ができなくなっている、という現実を受け入れていかないといけないと思う。この観点からすれば、もしかして日本の労働力不足の問題は、日本の常識を問い直す良いチャンスなのかもしれない。ぜひその時は日本の素晴らしいおもてなし・配慮がちゃんとお金になるようになってほしいものだ。