大学時代のゼミで、世界の経済格差問題、いわゆる南北問題に興味を持った。そんなときに、大学生向けに泊りがけの国際セミナーが多摩で開催された。そのセミナーは、部会が各地域ごとにあり、そのとき、ある意味発展途上地域の消去法で残ったラテン・アメリカのグループへ入った。そこには、偶然にも後ほど恩師となる大学院の教授たちとのめぐり合い、そしてアルゼンチン、メキシコからの留学生との出会いがあった。当然そのとき僕は、スペイン語なんてまったくわからなかった。その部会にいた人たちは、XX外国語大学スペイン語学科、みたいな人ばっかりだったような気がする。
 そして、たまたまメキシコから来ていた留学生は、お母さんが日本人、という方で、日本語ができたので、彼と夜飲みながら、メキシコの文化、風習の話を聞いていた。まあ、当然ながら、メキシコの女性はきれいだとか、すごく愛情表現がうまい、とかね。その時に運命を決める話があった。
 メキシコでは、彼女に愛を告白するときに、夜12時過ぎに彼女の自宅に、5人から10人ぐらいのラッパや、ギター、バイオリンなどをもった楽団を連れ、また手には大きなバラの花束を持って行くんだという。そして、その楽団にマリアッチという愛の歌を5-10曲弾かせる。そのとき男は、楽団の前に立ち、腕を広げて、歌を一緒に歌う。そして、彼女は、彼女になってもいい、ということであれば、家の2階の窓を開け、それから玄関から出てきてくれる。そして、キスと抱擁をしてくれる、とのことだ。
 その話を聞いて、「これだー」と思った。これこそが男が人生をかけてすることだー、となんか思っちゃったんだよね。これをするんだ!ということで、その翌日からメキシコの勉強を始め、メキシコの勉強なんて大学ではできないので、ラテンアメリカの事を勉強できる数少ない大学院へ入るために勉強を始めたのである。
 まあ、なんでも思い立つ動機というのは不純なものだ。むしろ、僕には純粋に学問のため、とか行っている人はすごいと思うよ。そんな動機でよく続くなーってね。ということで、これが僕のメキシコとの出会いである。