我々が武器を頼りにして異国人の所業に誅罰を加え | 大河と龍

我々が武器を頼りにして異国人の所業に誅罰を加え

 「我々が武器を頼りにして異国人の所業に誅罰を加え、あくまでも彼らと戦いつづける覚悟を決めるのであれば、神々の加護のもとに無事に脱出することができるという明るい希望はいくらでもあるのだ。」

 

 彼がそう言っているときに、くしゃみをした者がいた。それを聞くと、兵士たちは全員一斉にひざまづいて、吉兆を示したもうた神に拝礼するのであった。

 

                                    「アナバシス」クセノフォン

 

 ここまで読んで、なんでくしゃみをしたのが神の吉兆をあらわすのか?笑ってしまうひともいると思う。現代では考えられない。

 

 しかし古代ギリシャでは戦いには必ず神のご加護がないと勝利できないとされていた。ただしその吉兆がくしゃみというのは面白い。

 民俗学に詳しい人ならくしゃみが出たときに日本人はくさめ、くさめと呪文を唱えるのを知っている。というよりも全世界でくしゃみが出たときには呪文の言葉を唱える。

これは古代人がくしゃみがでたときに、魂が口から出ていかないようにしたからとされている。逆に西洋ではこの兵士たちのように吉兆ととらえるようだ。今でもくしゃみをしたときに使われる“bless you”は「お大事に」という意味。 “May God bless you”や “God bless you”を短縮したもので、英会話ではよく耳にする。

 

  逆に吉兆がないと勝てないと思い、いつまでもその神のしるしを待つこともあったという。なかなか気の長いギリシャ人。