静まりかえった中、みんなの視線を伴って僕は座席に着いた。
着いた途端、仲間の内で一番の暴れん坊で一番人情深いハチが目に涙を浮かべながら、
「龍馬、死ぬなよ!」と抱きついてきた!
ハチは高校に入ってまだ1週間もたたないうちに喧嘩を売りに来た時以来の付き合いだ。
どこへ行っても、相手が誰でもすぐ暴れだす。
そのくせ人一倍人情深い。
今は4人の父親でバイトから自営を始めた苦労人。
仲間の中で結婚も一番早く、その時司会を頼まれたのが僕だ。
一瞬、
『何を何処まで知っているんだ!』 と、
たじろったと同時にいきなり想像外のハチの発言に熱いものがこみあげた。
ハチを離し、
『バカ野郎! 勝手に人を殺すな!』
『たいしたことねぇ~よ。同情するなら金をくれ!』
と何処までもおどけるしか他に方法が思いつかなかった。
こいつらには、ごまかしが効かない。
余計な事をすればする程、気付かれる。
「何読んでんだ、お前?」
と隣りに座った、星が聞いてきた。
僕はその時、僕のような症状の人が書いた体験談の本を鞄に入れていた。
星はその本をパラパラとめくり、
「こんなもん読んでいるから具合が悪くなるんだ! こんなもん読むなよ!」
と本を取り上げた。
「酒飲んでも平気なのか?」
と修が聞いてきた。
『別に内臓が悪いわけじゃないんだし、今更酒を止めなきゃならないようだったら、とっくに死んどるわ!』
「そうか、じゃぁ飲め、飲め。タバコも平気かほら!」
と幸司が言って、取り皿にいろいろと料理を取り分けてくれた。
あっというまに僕の前に料理と酒がならんだ。
少しずつ病気の話しをしていったが、
「原因不明で体が動かなくなった」という事以上は伝えられなかった。
その事だけでも、彼らにとっては大問題だったようだった。
簡単に一通りの話しを終えると、その後は以前と変わらないバカ話で盛り上がった。
卒業して何十年も経っているのに、そしてそれからも何度も会っているのに僕らは毎回同じような話題で話しが盛り上がる。
涙を流しながらだったり、腹を押えながらだたりして、
大笑いする仲間がいて、そして今僕もここにいられる。
『あの時のままだ。。。』
僕も体の痛みを忘れるくらい騒いだし、大笑いした。
頭の中がスゥーと何にも無くなるように軽くなっていくようだった、気持ちが楽になり力が抜けていくようだった。
ただ、楽しかった!
大笑いも一段落した頃、洋二が、
「龍ちゃんも、口だけなら病人だってわからないよな。全然、変わらないし。」と言った。
それを聞いていた賢が、
「憎まれっ子、世にはばかるだ! 龍馬、その憎まれ口を叩き続けて世にはばかれ!」
その言葉に、そこにいた全員が口をそろえた。
「そうだ!そうだ!」
洋二と淳は入院の時に先に体調の事を話しておいた。
そして、この閉め言葉に助けられた。
来るまで、あんなに心配していた事が嘘のように自分の中で消えて行った。
『俺は、俺のままでいいんだ。。。』
そう言ってくれる連中が目の前にいる。
上辺だけの言葉じゃない。
うなずくみんなの顔を見れば、何をいわんとしているのかがよくわかる。
そして、彼らは見事なまでに僕の心の心配を見抜き癒してくれ、
おまけに、ちゃんと僕の居場所を残してくれていた。
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