僕はO医師に頼み込みO医師は僕を信用して見せてくれたのだが、S医師の書かれた診断書には「疑い」のある病名として3つの病名があげられていた。
本来なら医学英語で書かれているので、素人が見てもわからないものだし僕も全てがその場で理解できた訳ではなかった。

重要だと思われる所だけ、暗記をして診察室を出て直ぐにその単語をメモした。

O医師も心療内科として、考えられる病名は「身体表現性疼痛障害」だとしてそれようの薬とちゃんとした睡眠薬を処方してくれた。

僕は自宅に帰る途中に図書館に寄り、英文の医学辞書を閲覧してさっきメモをした単語を片っ端から調べ始めた。

その中には、大した事のないものも含まれていたが「疑い」のある病名の内1つは「慢性疲労症候群」でこれはどうみても当てはまらない病名だった。

後の2つはやはり難病だった。

どちらも、現在の医学では完全治癒する薬も治療法も存在しない。


最後の病名を調べていた時に、さっきまで僕を支えていたものが背筋から血の気を引くように消え去っていった。
「疑い」ではあるが、最悪の場合僕の病名の一つは。。。







発生から5年生存率20%








しかもその病気に対する治療方法も薬も未だ世界中の何処にも存在しないものだった。

明らかに、他の2つとは違う。
1歩間違えれば、大変な誤診なる。これではさすがのS医師もそう簡単に病名を着けられるはずがない。



頭が真っ白になり、呆然となった。


それと同時に体中に自分に突きつけられた恐怖からなのか震えが止まらなくなった。

しばらくして図書館を後にした。
あくまでもまだ「疑い」なのだが、その時にはもう青い空を見上げる力さえも失っていた。



空は晴れているのに、うつむいて歩く僕の歩いた後には、大粒の空のしずくが乾いた道路をポツポツと湿らしていた。



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