S医師は、T大病院に来るのは大変だろうからと自宅の近所のリハビリ科を調べて、照会文を書いてくれた。
それと同時に心療内科にも診断書も書いて渡された。
心療内科に対する診断書の意味は憤慨している僕に対して、
気分を安定させるためと西洋医学での見地で原因不明の場合、
精神的なものからきているのではないかと察する2つの理由からだろう。
つまりは科学的根拠の見られない原因不明の症状の場合、
患者の思い込みや精神的な問題で病気になってしまう事も多くはないからだ。
実際に僕もカウンセラーとして、そういうクライアントと何人か接してきた事がある。
だから、いつかは精神科か心療内科に回されるだろうという事は察しはついていた。
ただ僕の場合は何度も髄液検査をやりその度に異常値がでて、
実際に筋力が落ちてきている事は事実なのだし、その他にも異常は認められている。
「問題のない弱視」もその一つだと思われるので、そのケースで考えられるのは少ないのだが。。。
それでも思い込みなら、思い込みで治ってさえくれればそれでいい。
この際、元の体に戻れるなら病名なんて何でもいい
病名が「思い込み」なら逆にそれにこした事はないのだから!
ただ最後に、弱視になったことを聞いた時に、
「断定は出来ないが、視神経に異常があるかもしれない」
と言う発言をしたのが気になった。
元々、僕の病気は脳神経系の病気だと思われていたのだから。
あと一つ特定の場所に異常が見つかれば、難病の一つとしてちゃんとした病名がつくのだからと思った時に、
心療内科に診断書を書いた意図が2つの理由のうちのどちらなのかという不信感を少しだけ抱いた。
長く、屈辱的な時間を過ごしてT大病院をでたのは午後の7時頃だった。
心無い人間に動きの悪くなった身体で10時間も嫌な時間を過ごした。
僕は心身共に疲れきっていた。
これからまた、階段を上り下りする体力も気力もなかったので、タクシーに乗って家路に向った。
(本当に疲れた。一日だった)
病院に着て、これ程後味が悪くなるとは夢にも思わなかった。
「はぁーっ!」
タクシーの中で唯一できたことは、ため息を一つつく事だけだった。
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