あの騒ぎがあっても、入院生活は何事もなかったようにすぎていった。

ただ、その時に手伝ってくれたナースは婦長にひどく怒られて、僕の担当からはずされたそうだ。

(彼女は何も悪くないのに。。。)


(一番患者の困った時に助けてくれようとしただけなのに。。。)


(何故そこまで怒られなきゃいけないんだ?)


(確かにルールはある。でも、ルールだけで縛ってしまう事だけが正しい事なのだろうか?) 


(物を相手にしているんじゃない。人間を相手にしているのだから。)

その後何度か、廊下ですれ違ったけど、僕の謝りに彼女は、「いいんですよ。気にしないで下さい。」

と笑って言葉を返してくれた。 


申し訳なくて何とも言えない気分だった。

入院した当時はまだ、Tシャツ一枚でよかったのに肌寒い季節を向えるようになってきた。
仕方がないので弟に電話をして、上に羽織るものを持ってきてもらうように頼んだ。

検査は、T大病院でもできない細菌とウィルス検査を行う事になった。
これで一通りの検査は終わるという。

3日にわけて無菌室に入り毎日採血をするというものだった。
正直、(もう、何でもしてくれ。。。)て感じだった。

僕の気持ちを察しているのかいないのか、ゆみえからこんなメールが届いた。

『あのさ、いい針治療院知らない? 一人で行くの恐いからさ一緒に行こうよ。あっ!勿論、退院してからでいいからね♪』

ゆみえらしい。。。呑気な事を言っては、いつも僕に気を使ってくれる。
でも、もうこれ以上体に針を刺されるのはごめんだよって返事を書いたら、

「やっぱり(^^♪)」って笑っていた。

彼女はどこかで監視衛星を飛ばしているかどうかは謎だが、本当にタイミングがいい。
恐いくらいだ!
でも時には優しく、時にはストレートな言葉で、そして呑気な言葉でいつも僕の言って欲しい事を言って勇気を与えてくれる。
閉鎖された時間と空間の中で本当に気が休まる存在だった。
(一度、別れを告げたのに。。。)

きっと、彼女もいろいろ悩んでいるのだろう。

そして忙しくて大変であるはずなのに、時間を作ってはいつも僕を励ましてくれる。
本当にありがたかった。

無菌室に入る前に弟がジャンバーを持って来てくれた。
そこで、衝撃な事実を聞いた。

「親父が癌検診で引っかかったらしい。まだ早期らしいけど。。。」



                                          
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「父は今年二月で六十五 顔のシワはふえてゆくばかり
仕事に追われ このごろやっと ゆとりができた
父の湯呑み茶碗は欠けている それにお茶を入れて飲んでいる
湯飲みに写る 自分の顔をじっと見ている
人生が二度あれば この人生が二度あれば。。。」

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