龍馬。昨日は遅くまでごめんね。」

「本当の龍馬の辛さがわかってあげられないから、私にはあんな事しかできなくてごめんなさい。」
「ゆっくり静養するつもりでね。何かあったら連絡を下さい。気をつけてね。お大事に。」

「一日も早い復帰をまっています。」

ふぅーと肩で息をして、携帯の電源を切った。

そして、「よし!」と気合をいれて早く治して帰ろうと決意を新たにした。
そこに書いてあった予定表の病名欄には「多発性硬化症の疑い」と書かれてあった。
今までに、聞いた事のない新しい病名がついた。
しかし、相変わらず「疑い」の文字は消えてない。

しばらく待つと、担当の医師が研修医と共にやってきた。
一番最初に驚いたのは、僕の名前が「M院長の患者さん」となっている事。

何かにつれて「M院長」の名前がでる。

(誰の為に、俺の体を見てくれるんだ。。。?)

一抹の不安を感じながら、説明を聞いていた。
そして、さらに驚いたのは、「病室を変わってください」と言われた時だった。
「なぜ?」と聞くと、そっちの方がプライベートも保てるし気楽だと思いますので・・・

信じられない言葉が帰ってきた。
病室によって治療方法が変わるのか?と聞いた所、
「そんな事はないですが・・・」
「じゃぁ、ここでいいです。」

医者の世界も狭い。
つまらない所で気を使うなら、もっと真剣に治療方法を考えてくれと言いたかったが、気持ちを抑えて大部屋に残る事になった。

医療過誤が多くなってきて病院の責任問題も大変なんだろう、何枚もの承諾書にサインをさせられた。
これで、僕の病気と命は彼らの担保になった。


1リットルの涙
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